マンションのベランダなどでタバコを吸っている「ホタル族」の煙に苦しめられている――思わぬ受動喫煙の被害を受けている人たちが2017年4月25日、「近隣住宅受動喫煙被害者の会」を結成しウェブサイトを開設した。
ウェブサイトには同会の目的として「『ベランダ喫煙禁止法』の制定をめざす」と記載されており、厚生労働省や国土交通省に申入れを行い地方自治体に条例制定を働きかけるほか、弁護士会へ人権侵害救済の申立てを行うとしている。
主流煙よりたちの悪い副流煙
もはや常識かもしれないが、受動喫煙は喫煙者が吸い込む「主流煙」ではなく、タバコの先端から発生する「副流煙」を吸い込むことで起きる喫煙のことだ。主流煙が喫煙者の健康に大きな影響を与えるのはもちろん、副流煙にも有害な発がん性を持つ化学物質が多数含まれていることは科学的にも確認されている。世界保健機関(WHO)の付属機関である国際がん研究機関(IARC)は、最上位の発がん性を有するグループ1に「喫煙」「たばこ煙」と同列で「受動喫煙」を分類しているのだ。
2012年に国立保健医療科学院が発表した「たばこ煙の成分分析について」によると、タバコの吸い口から収集された各種化学物質を分析すると外箱に記載されたタールやニコチン量に比例して有害成分量も増加していた。しかし、副流煙に含まれる成分量はどの銘柄でもほとんど同量で差がなく、主流煙の数倍から数千倍の有害化学物質を含むというから、受動喫煙の健康被害は深刻だ。
一般的な受動喫煙のイメージは、分煙のされていない室内などで喫煙者がタバコを吸い、同じ空間にいる非喫煙者がその煙を吸い込んでしまうというものだが、マンションで階下の住人がベランダで喫煙をしており、上の住人が換気のために窓を開けたところ煙が流れ込んでくるといいった状況も当然受動喫煙となる。
飲食店などでの分煙と異なり、マンションでの受動喫煙は居住空間ということもあって、近所付き合いなどを気にして喫煙をやめるよう言いづらく、非喫煙者の住人が我慢を強いられるという状況も多いようだ。都内のあるマンション管理会社もJ-CASTヘルスケアの取材に対し、「喫煙をやめてもらうよう言ってもらえないか、と住人から相談が寄せられることはある」と答えた。
「不快に思われる住人がいる以上、喫煙者の住人に配慮していただけないかと伝えはするのですが、我々としても『禁止です』『やめてください』とは強く言いづらいのは事実です」
バルコニーやベランダなどは共用部分にあたるものの専用使用が認められているため、強く中止を求めにくいと対応に苦慮する様子を見せる。ベランダでの喫煙を禁止したところ居室内で喫煙するようになったが、換気扇を回して煙を排出しているため、結局状況が変わらないという例もあるようだ。
「三次喫煙」による健康被害の可能性も
また直接副流煙を吸い込んではいなくても、衣服や洗濯物などに煙などが付着して臭いやニコチンに悩まされるというパターンもマンションの受動喫煙でよく聞かれる訴えだ。さらに、近年では付着したニコチンが空気中のガス成分と反応し「ニトロソアミン」というより有害な物質となって放出されるという「三次喫煙」も問題視され始め、米国を始め海外では「thirdhand smoke hazards」として論文も多数発表されている。
強力な空気清浄器などを設置すれば、受動喫煙・三次喫煙対策になるのだろうか。WHOや米国暖房冷凍空調学会が発表した「環境たばこ煙における意見書」によると難しそうだ。タバコの煙には5300種類以上の化学物質が存在しおり、それら化合物を完全に除去することは困難とされ、「家庭における環境たばこ煙を最小限に抑えるために最適な方法」として同意見書は「室内における完全禁煙」を提言している。