2025年開催の国際博覧会(万博)の大阪誘致活動は、正式立候補の段階に漕ぎ着けた。大阪府政を握る日本維新の会肝入りのプロジェクトであることから、改憲に向けた維新の協力を期待する安倍晋三政権が、万博誘致を強力にバックアップしている。ところが、改憲に積極的な産経や読売を含め、マスコミの論調は冷ややかという、ちょっと珍しい状況になっている。
木寺昌人・駐仏大使は2017年4月24日、万博誘致委員会の榊原定征会長(経団連会長)、松井一郎・大阪府知事を伴ってパリの博覧会国際事務局(BIE)本部を訪れ、立候補表明文書をロセルタレス事務局長に手渡した。万博は都市が主催する五輪と違い、国が主体で、立候補も、あくまで政府が届ける形になる。
パリが先行しているとの見方
政府の構想によると、大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。2025年5月3日~11月3日の185日間、大阪湾岸の人工島「夢洲(ゆめしま)」(大阪市此花区)を会場に開く。2015年開催のイタリア・ミラノ万博より700万~900万人多い2800万~3000万人の来場を見込み、1兆9000億円の経済効果があるとしている。会場建設費1250億円は国、大阪府・大阪市、民間が3分の1ずつ負担し、運営費は入場料などで賄う方針だ。
最大のライバルはパリ。2016年11月に立候補を届けている。BIEは2018年初めに立候補国を訪れ、開催意義の妥当性や地元の機運、資金調達の見込みなど14項目を調査し、報告書を加盟国に配布。同年11月にBIE加盟国168か国による投票で開催国が決まる。
2012年末に万博誘致に向け自治体や経済界らによる誘致推進のための協会が発足させ、準備を進めてきたパリが先行しているとの見方が多い。来場者の見込みは4000万~6000万人、経済効果250億ユーロ(約3兆円)と、大阪を上回る。これに対し、大阪の構想が浮上したのは2014年夏、維新の会の前身の大阪維新の会の松井代表が経済政策の一環として掲げ、安倍政権が改憲を含む維新の政権への協力を取りつける狙いもあり、大急ぎで準備した感が否めない。ちなみに、2005年の愛知万博は閣議了解まで7年かけ、その間に10カ国以上を訪問してアピールしていたほか、国内でも市民参加型シンポジウムを開くなど、世論の理解を得るための実績を重ねていた。
この大阪万博構想について、立候補に前後して、全国紙が一斉に取り上げている。大きな論点は、テーマの評価のほか、大阪府・市が万博とセットで夢洲にカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を目指していること、そして資金だ。