乳がんがある乳房の母乳から特殊なタンパク質が
さて、母乳の検査から乳がんを判別する研究を発表したのは米クラークソン大学のロシャナック・アシュレバーグ博士らのチームだ。2017年4月下旬に米シカゴで開かれた米国生化学・分子生物学会年次集会で発表した。発表内容を報道した米の医療ニュースサイト「HealthDay News」の2017年4月22日号によると、研究チームは24~38歳の女性8人から母乳の検体10件を採取した。10件のうち5件は乳がんのある乳房から、5件は健康な乳房から採取した。女性2人が、自分の健康な乳房と、乳がんがある乳房から1件ずつ母乳を提供した。同じ女性の両方の母乳を比較することで、より正確に乳がんのバイオマーカー(がん組織があることを示す生体因子、指標)を分析することが可能になった。
8人は全員が母乳育児の経験者とみられ、母乳が出ない人は、乳房を温め、マッサージを行ない、乳房内に少量残っている分泌液を乳頭から吸引した。乳がんのほとんどは乳頭から分泌液を出す乳管上皮細胞から発生する。乳管は母乳を出す組織で、母乳の中には上皮細胞も混入する。だから、母乳の中に乳がんの危険な兆候を示す物質が含まれる可能性は高いわけだ。
乳がんの乳房から採取した母乳と、健康な乳房から採取した母乳を比較した結果、乳がんの母乳にだけ現れる、いくつかの特殊なタンパク質を発見した。アシュレバーグ博士は、「HealthDay News」の取材に対し、こう語っている。
「このタンパク質が乳がんのバイオマーカーになる可能性があります。まだサンプル数が10件のパイロット研究ですが、女性が40歳までに乳がんになると、早期発見がより重要になります。しかし、若い女性は高密度の乳房なのでマンモグラフィーによる早期発見が困難です。母乳の分析が若い世代の早期発見につながるだけでなく、乳がんになるリスクを予測することに役立つ可能性があります」