安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)をめぐる「新文書」の信ぴょう性をめぐる攻防が続いている。
2017年5月17日時点では、文書に作成日時が記されていないことなどを理由に政府は「怪文書みたいなもの」と一蹴していた。だが、翌18日には、日付・時刻や出席者入りの文書の存在が浮上。それでも政府は「信ぴょう性は定かではない」と立場を変えていない。ただ、安倍政権に近いジャーナリストは、文書が「本物」だとの見方をテレビ番組で披露している。野党は安倍首相の関与を追及したい考えだが、果たして局面は動くのか。
「作成日時だとか作成部局だとか」...
文書は、加計学園が特区に獣医学部を新設する計画をめぐり、特区を担当する内閣府が、手続きを渋る文科省に対して「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」などと早期の対応を求めたとする内容。朝日新聞が2017年5月17日付朝刊の1面トップ(東京本社最終版)で最初に報じた。
菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で
「あの文書がどういう文書かさえ、その作成日時だとか作成部局だとか、そういうのが明確になっていないのではないか。通常、役所の文書はそういう文書じゃないと思いますよ」
「誰が書いたか分からない、そんな意味不明なものについて、いちいち政府で答えるようなことはない」
と文書の信ぴょう性を疑問視。同日午後の会見では
「怪文書みたいなものなのではないか。出所も明確になっていない」
と、さらに不快感を強めた。
処分された文科省関係者が「逆恨み」でリーク??
この日の会見で菅氏が疑問視したのは、文書に「作成日時」や「作成部局」がない点だった。だが、朝日新聞は5月18日朝刊(東京本社最終版)で、内閣府が文科省に「官邸の最高レベルが言っている」などと伝える新たな文書の存在を報じた。この文書には、会合の日時や出席者が記されていた。
こういった点を踏まえても、政府は引き続き文書の信ぴょう性を疑問視する立場だ。菅氏は18日午前の会見で、文科省で文書について確認しているとして、
「少なくとも昨日出た内容については、出元が分からず、信ぴょう性も定かではない。今日のものも変わりない」
と述べた。
一方で、実は官邸が文書を「本物」だとみて対応しているとの見方も出ている。きわめて安倍政権に近いことで知られている、時事通信社特別解説委員の田崎史郎氏は5月18日朝放送の情報番組「とくダネ!」(フジテレビ)の中で、17、18日に報じられたいずれの文書についても「多分本物だと思う」と発言。その上で、
「文章を流出させたのは文科省関係者であることは確実。官邸の方は、誰がリークしたか特定している」
などと説明した。文書を流出させた人については
「ちょっと問題があって処分された人。それで逆恨みしているのではないか、というのが官邸の現段階の解説」
とした。
安倍氏は3月13日の参院予算委員会で、加計学園の問題について
「働きかけて決めているんだったら、私、責任取りますよ。当たり前じゃないですか」
と答弁している。こういったことを念頭に、野党は
「忖度(そんたく)があったならば、総辞職に値する」
(民進党・蓮舫代表)と攻勢を強める。
ただ、田崎氏は同じ番組の中で、
「それ(文書が本物であること)と、安倍総理が加計学園だけを優遇しようとしたということとは結びつかない」
とも主張。
官僚による忖度と安倍氏による「働きかけ」は別問題で、政権には影響を与えないとの見方だ。