これが「トランプ相場」の終りのはじまりなのか――。東京株式市場は2017年5月18日、日経平均株価が一時、前日比365円15銭急落し、1万9449円73銭まで値下がり。1万9500円台を割り込み、5月2日以来の安値となった。
6日続伸した5月16日には年初来高値の1万9988円49銭を付けて、2万円の大台に迫ったが、17日の米ニューヨーク株式市場のダウ工業株平均30種平均が前日比372ドル82セント(1.8%)安の2万606ドル93セントと急落。その流れに巻き込まれた。きっかけは、米トランプ大統領への政治不信だ。
米国政治への不信感高まる
米トランプ大統領の「ロシアゲート疑惑」に、金融市場が反応し始めたようだ。2017年5月17日の米ニューヨーク外国為替市場で円相場は急伸。前日比2円25銭、円高ドル安の1ドル110円80~90銭で取引を終えた。一時、110円79銭と4月25日以来、約3週間ぶりの円高ドル安水準に達した。
一方、米株式市場は同日、ダウ工業株30種平均が2万606ドル93セントで終え、4月21日以来およそ1か月ぶりの安値を付けた。
米メディアが16日夕、トランプ米大統領が米連邦捜査局(FBI)のコミー長官に、フリン前大統領補佐官のロシアとの関係をめぐる捜査を終了するように圧力をかけていた可能性があると報じた、「ロシアゲート疑惑」がきっかけとされる。
米トランプ大統領は5月10日に自身のツイッターで、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官を解任したことについて、「ずっとましな仕事をする誰かがコミー長官の後任になる。FBIの精神と威信を取り戻すだろう」と綴った。
解任理由は、大統領選挙中、クリントン元国務長官(民主党)が長官在任中に私用メールアドレスを使っていた問題としているが、FBIがロシアによる大統領選介入問題とトランプ陣営の関係を捜査していることが取り沙汰されている。コミー長官の解任は、その疑惑をもみ消そうとしたというわけだ。
加えて、機密情報をロシア政府に漏らした疑いをも浮上し、現地では大統領への弾劾の可能性すら報じられている。このため、トランプ大統領への不信感が強まり、米国政治が混乱するとの懸念が拡大。円やユーロに対して米ドル売りが広がり、さらに米株式相場が急落したことで投資家らのリスク回避の姿勢がより強まったことで安全通貨の円買いが膨らむ、という悪循環に陥ったようだ。
投資家らが「楽観しすぎていた」
こうした流れを受けて、5月18日の東京外国為替市場の円相場は、約3週間ぶりに一時1ドル111円台に急伸。大幅な円高ドル安水準となった。
一方、東京株式市場は同日10時すぎに一時300円超も急落。「ロシアゲート疑惑」とそれに伴う円相場の急騰で、ほぼ全面安の展開となった。円高で、輸出関連株が値下がりしたほか、これまで「トランプ相場」をけん引してきた金融株などが大きく売られた。
終値は、前日比261円02銭安の1万9553円86円に踏みとどまった。
そうしたなか、株式市場の見方は分かれている。ある個人投資家は、「きょうは最近の続伸もあって利益確定売りが強かったように思いますが、きっかけがきっかけだけに長引くかもしれませんね」と、「トランプ相場」の打ち止めを心配する。
一方で楽観的な見方もあり、第一生命経済研究所経済調査部の主任エコノミスト、藤代宏一氏は、「株式相場をみるときの指数に恐怖指数(VIX)があります。株価のボラティリティー(変動率)をみるのですが、一般に景気がいいと低くなる傾向にあります。これが最近、景気が上がり続けるとはいえないような状況なのに、異様に低かったんです。つまり、投資家らが楽観しすぎていたわけで、それ(恐怖指数)が正常化しただけと考えると、(今のところ、ロシアゲート疑惑が)大きなブレーキになるとは考えにくいです」とみている。
国内は企業の2017年3月期決算発表の真っ只中で、その内容も総じて悪くないこともある。