俳優の日下武史(くさか・たけし、本名・孟)さんが2017年5月15日、誤嚥性肺炎のため静養先のスペインの病院で死去した。各紙が報じた。86歳だった。
劇団四季の創立メンバーで、看板俳優として活躍した。映画の吹き替えやナレーションでも親しまれた。
吹き替えでも活躍
慶応高校在学中に、作曲家の故・林光さんらと演劇部に入り、一年後輩の浅利慶太さんを勧誘。当時、同高の英語教師のかたわら演劇活動をしていた劇作家の故・加藤道夫さんの指導を受けた。
53年、既存の新劇に対抗しようと、浅利さんらと劇団四季を創設。旗揚げ公演「アルデール又は聖女」(ジャン・アヌイ作)で初舞台を踏み、「ヴェニスの商人」「エクウス」「ハムレット」「鹿鳴館」などが代表作。
重厚な役作り、落ち着きのある知的な演技で知られ、「南極物語」「まあだだよ」などの映画や、「新・平家物語」「鬼平犯科帳」「剣客商売」などのテレビドラマでも活躍した。
正確な日本語の発声力で一目置かれ、しばしば外国映画の吹き替えに登場、『アンタッチャブル』のエリオット・ネスなどが当たり役。ナレーションでも活躍した。14年に東京・自由劇場の『思い出を売る男』が最後の舞台だった。90年度の芸術選奨文部大臣賞、96年紫綬褒章など。
「一杯のかけそば」分け合う
浅利さんとは「友情と仕事が一緒という稀な出会い」(「文藝春秋」2008年9月号)。劇団四季のスタート時は経営的に苦しく、浅利さんと一杯のかけそばを分け合ったこともあったという。
浅利さんは毎日新聞などに「劇団四季創立以来の同志でもあった日下さんの訃報に接し、悲しみを禁じ得ません。イメージ豊かな明晰(めいせき)なせりふで、多くのお客さまを魅了する素晴らしい俳優でした。在りし日の姿をしのび、心より冥福を祈ります」と追悼のコメントを寄せている。