雷雨の日にぜんそくの発作が悪化する謎 死者まで出る恐怖のメカニズムが判明

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豪雨と雷の電気で花粉が噴射現象を起こす

   (1)雷雨の前に吹き抜ける風や強風が、ぜんそくの原因となる多くの花粉やカビ、キノコの胞子を空中に舞い上がらせる。

   (2)続いて急な降雨が湿度を上昇させ、水を吸い込んだ花粉粒子が細かく分解・破裂し、さらに空中に飛散する。特にライムグラスの花粉粒子にその傾向がみられる。

   (3)そこへ、雷の発生による電気的な力学が加わり、花粉の断片化を促進し、「バイオエアゾール現象」が発生する。エアゾールとは殺虫剤などでおなじみの「霧状の噴射」だ。「バイオエアゾール」とは、花粉やカビなどの超微細な生物の粉末が激しく霧状に噴射する現象をいう。

   (4)こうして嵐の通過とともに、大量に噴射する花粉やカビなどの粉じんをぜんそく患者は肺の奥まで吸い込み、激しい発作に襲われる。

   グルトシュタイン教授は今回の結果について、こう語っている。

「雷雨ぜんそくの発症は、非常に複雑な現象です。しかし、私たちの研究は雷雨の発生時期が予測できれば、どのくらいの大きさの嵐になるかによって、雷雨ぜんそくの発症率を予測し、医療機関が準備態勢に入ることに貢献できるでしょう。また、ぜんそくを持つ人々に警告することにも役立ちます」

   ところで、ライグラスはヨーロッパ原産の植物だが、明治時代に日本にやってきて、「ネズミムギ」という名前で全国各地に野生化している。花粉が飛ぶ時期は4~8月だ。日本では大丈夫なのだろうか。今のところ「雷雨ぜんそく」の発症例はないようだ。ただ、台風などの嵐の時や、つゆなどの湿度が高い時期はぜんそくの発症が多いことは指摘されている。

   医師が執筆する医療サイト「メディカル・タウン」の「気管支ぜんそく」の項目をみると、佐野虎ノ門クリニック院長の佐野靖之医師が「季節の変わり目、秋の台風シーズンに多くみられるぜんそく」というタイトルで、こう書いている(要約抜粋)。

「ぜんそくの症状の悪化の要因は様々ですが、季節性のものとして、秋の台風の多いシーズンには外来患者が約2倍に増加するなど低気圧の影響がみられます。また、6月の梅雨の時もそれなりに悪化がみられ、天候、あるいは低気圧、気圧の変動、雷が鳴る時など様々な原因があります。さらに、秋には夏に増えたダニの死骸が舞って、そのダニを吸入することによってぜんそくが悪化するともいわれています」

   ぜんそくを持つ人は、雷雨とともにこれから始まるつゆにも要注意だ。

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