手負いの横綱・稀勢の里の体調を不安視する声がやまない。3連覇がかかる2017年夏場所が始まると、2日目の後には早くも元横綱・朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏から治療を勧める声が出た。
3日目に勝って白星先行としたが、その内容は本調子とは遠いと見る向きが多い。過去1日しか休場したことがない稀勢の里だが、このまま今場所も出続けるのか。
元朝青龍「だからやるな!!」
先場所で負傷した左腕がどれだけ使えるかが大きな焦点となっている夏場所の稀勢の里。2017年5月16日の3日目、前頭筆頭・千代の国相手に何とか白星を取ったが、体の動きは疑問が残った。
千代の国は稀勢の里の左差しを警戒し、右脇を締めながら押し上げた。正面から組み合い、右まわしを取って稀勢の里を一時は土俵際まで追い詰めた。右足1本でこらえた稀勢の里に、千代の国は差し直そうと右まわしを離した。そこで稀勢の里が前に出て形成が逆転し、引いた千代の国を押し出した。中盤まで、稀勢の里の左は千代の国の動きに追いついていなかった。また、押し出す時も稀勢の里の足の運びは覚束なく、千代の国の引きに前のめりに倒れるというところだった。
2日目の前頭2枚目・隠岐の海に寄り切りで今場所初白星を手にした一番でも、稀勢の里は左を差しに行ったが、一度つかんだまわしは簡単に離された。16日付サンケイスポーツ紙面では、藤島親方(元大関・武双山)が「左四つになったが、上手は取れず隠岐の海の引くような動きに乗じて寄り切った」と厳しい見方。続けて「隠岐の海はそれほど動きが激しくないし、いっぺんに出る力士ではない。その相手に、慎重にというより言い方は悪いが、左があまり使えないままごまかして何となくしのいで勝った感じだ」と本調子とは程遠い見解だった。
実際、けがの具合は思わしくないと見る向きが多い。両国国技館で2日目の取組みを生観覧していた美容外科医の高須克弥氏が「痛そう 稀勢の里。がんばれー」と、テーピングで固めた稀勢の里の左肩をアップにした写真をつけてツイートすると、ダグワドルジ氏は「だからやるな!!完璧にしたから土俵に上がれ!!」(原文ママ)とリプライ(返信)。完治を勧めた。
「この相撲を見たら完治はしていませんね」
黒星を喫した初日5月14日の取組み後には、春日野親方(元関脇・栃乃和歌)が同日夜の「サンデースポーツ」(NHK)で「この相撲を見たら完治はしていませんね」とはっきり述べた。この日は小結・嘉風相手に完全に左を封じられ、力なく押し出された。春日野親方は「本来は相手の右手を押し上げて差さないといけない。しかし使えていなかった。左を封じられ、ねじ込めない。体を起こされた。これでは当然(左は)入りません」と、もともと稀勢の里の左が万全でないことに加え、嘉風が講じた対策がほぼ完璧に機能したことも分析した。
本来の相撲とは程遠い内容が続く稀勢の里。かねてから横綱には「結果」だけでなく、横綱たる「内容」も求められるとされる。過去に1日しか休場したことのない稀勢の里だが、3日目を終えてツイッター上でもこんな声がいくつも出ている。
「稀勢の里、勝ったけどさっさと休場してくれ。横綱の相撲じゃ無いし、半分同情されているぞ」
「これは休場も近いかな」
「壊れる前に休場はよ」
「もう休場で良いんじゃないか。稀勢の里の姿をみたいファンの気持ちも分かるが万全の稀勢の里が見たい」