米国のトランプ大統領に、「情報漏洩」疑惑が持ち上がった。トランプ氏が2017年5月10日(米東部時間)に行ったロシアのラブロフ外相らとの会談で、同盟国(ally)から得た過激派組織「イスラム国」(IS)に関する機密情報を漏らしていたというのだ。
ホワイトハウスは事実関係を否定しているが、仮に事実であれば、同盟国の今後の情報収集活動に影響が出るおそれがある。トランプ氏は日本をめぐっても、まだ10機しか配備されていないとされている最新鋭のステルス戦闘機について「35機が日本上空を飛行した」と発言し、疑念を呼んだばかりだ。
機内持ち込みPCとテロの関係について
トランプ氏の機密漏洩疑惑は5月14日にワシントン・ポストが米政府の現役と元当局者の話として報じたのに続いて、ニューヨーク・タイムズなども報じた。両紙などによると、トランプ氏は会談中、話の本筋から外れて、飛行機に持ち込まれたラップトップPCとイスラム国によるテロの脅威の関係について話しだしたという。
この情報は、米国が独自に収集していたものではなく、第三国から提供を受けたものだという。情報は機密度が高いため、米国も詳細までは知らされておらず、情報そのものも、米政府内のきわめて限られた人しかアクセスできないようになっていたという。第三国がどこの国なのかは明らかになっていないが、ロシアへの情報提供は承諾していなかったという。
ワシントン・ポストによると、米政府当局者は、今回のトランプ氏の行動が
「イスラム国の内部の動きにアクセスできる同盟国との協力関係を危うくする」
として批判している。
トランプ政権側は報道に反論している。マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は、記事は「誤報」だと主張。会談では、「テロ組織の一般的な脅威」は話題にのぼったが、
「インテリジェンスに関する情報源や手法は全く話題にならかったし、一般に公開されていない軍事作戦が公表されることもなかった」
とした。
「35機が飛行したが、レーダーに探知されなかった」
トランプ氏は、日本をめぐる「機密漏洩」を疑わせる発言でも波紋を広げている。最新鋭ステルス戦闘機「F35」の配備をめぐる問題だ。F35は17年1月18日に岩国基地(山口県岩国市)に10機が米本土以外としては初めて配備された。挑発を繰り返す北朝鮮や、東シナ海で軍事活動を活発化させる中国に対する即応体制を強化する狙いだと考えられている。米軍の発表によると、17年中にさらに6機が配備され、計16機体制になる。
だが、米タイム誌が5月11日にウェブサイトに掲載したインタビューでは、トランプ氏は
「彼ら(日本)はF35を導入し、マティス氏(国防長官)が日本を訪問した際には、そのうち35機が日本上空を飛行したが、レーダーに探知されなかった。上空を飛行し、皆が『どこから来たんだ?』と言っていた。これがステルスだ。かなりすごいだろ?」
などと「35機」という数を挙げながらF35の性能を自慢した。
菅官房長官「米軍の運用についてコメントは控えたい」
マティス氏が来日したのは2月3~4日。トランプ氏の発言が正しいとすれば、その時点の発表よりも25機以上多いF35が日本上空を飛行していたことになる。ステルス戦闘機はレーダーに探知されにくいこともあり、配備の数が多くてもわかりにくいのではないかという疑念を生む。
今回のトランプ氏の発言に対しては(1)単なる勘違い(2)未公表のF35の運用や配備計画について口を滑らせた、との二つの見方が出ている。
菅義偉官房長官は5月15日午前の記者会見で、
「そうした報道は承知している。ただ、政府として米軍の運用についてコメントすることは控えたい。いずれにしろ、政府としては米軍の部隊と私ども自衛隊と緊密に連携しながら(運用を)行っていることは事実」
と述べ、事実関係の確認を避けた。