腹痛を訴えて緊急入院した米ミシガン州在住の男性が多臓器不全によって生死の境をさまよったが、手足を切断しつつもなんとか生還した――CNNやワシントンポストなど海外の複数のメディアが2017年3月中旬にこんなニュースを大きく報じている。
難病か未知の病気かと思いきや、その発端は日本でも幼児にしばしば流行する「レンサ球菌咽頭炎」だったという。のどの炎症が手足の切断にまで至った原因はなんだったのか。
最初は単なる風邪かと思ったが
「レンサ球菌咽頭炎」は「レンサ球菌」という細菌によって引き起こされる感染症だ。幼児に多いとされているが、成人でもまれに感染する。菌の種類や侵入部位によって症状に差はあるものの、典型的な症状は3~4日程度の潜伏期間後に突然の発熱と全身倦怠感、のどの痛みで、嘔吐を伴うこともある。
東京都感染症情報センターのウェブサイトによると、「苺舌」と呼ばれる舌が真っ赤になる症状などが見られるほか、まれに重症化し全身に赤みが表れる「猩紅熱(しょうこうねつ)」と呼ばれる状態になるとされている。しかし、基本的には1週間以内に症状が改善する病気だという。
とても手足を切断しなければならないような病気とは思えないが、3月18日付のワシントンポストオンライン版によるとケヴィン・ブリーンさんの場合は違ったようだ。同紙によるとブリーンさんが最初に体調不良を感じたのは2016年のクリスマスシーズン。当初は風邪のようなだるさだったが、腹痛や吐き気を感じたため病院に行き検査をうけたものの、インフルエンザもレンサ球菌咽頭炎も陰性で、吐き気止めと痛み止めが処方されただけだった。
しかし翌朝になると腹痛はさらに悪化。取材に対しブリーンさんは「虫垂炎の痛みにも耐えたことがあるが、それどころの痛みではなかった」と答えている。大きな病院に緊急入院したものの医師らはブリーンさんの症状がわからず、CTスキャンによって腹部に影があることを確認。確認のために切開手術を行ったところ、1.5リットルもの膿がたまっていた。
しかし、臓器には異常が見られず医師らが困惑していたところ、ブリーンさんの発症前にブリーンさんの息子がレンサ球菌咽頭炎に感染していたことが判明。膿を詳細に分析したところレンサ球菌が検出され、ブリーンさんの症状もレンサ球菌咽頭炎が悪化したものだとわかったのだ。
治療を担当した医師はワシントンポストに対し「レンサ球菌がのどから腹部に移動し悪化するという、男性患者ではまだ2例しか確認されていない極めてまれな感染の仕方だった」と答えている。