「女性は、夫の死はあまり健康に影響しないが、老親の介護が命を縮める」「一方男性は、親の介護は体の負担にならないが、妻に先立たれることと失業・転職が身にこたえる」。――家族構成と仕事の変化が脳卒中などのリスクに与える影響について、こんな男女差が明らかになった。
国立がん研究センターが2017年5月10日に発表した2つの研究結果から浮き彫りになった。
妻に先立たれた夫は17%リスク高まる
同研究所の発表資料によると、2つの研究は「家族構成の変化と脳卒中発症リスク」(科学誌『PloS One』の2017年4月号発表)と、「就労状況の変化と脳卒中発症・死亡リスク」(心臓医学専門誌『Stroke』の2017年5月号発表)だ。ともに、詳細な健康調査データがある全国9カ所の保健所管内に住む約4万2000人の男女(45~59歳)を15年間にわたって追跡調査した。
それによると、家族構成の変化のうち、配偶者が死亡したケースを調べると、妻を失った男性は、妻が生きている男性に比べ、脳卒中になるリスクは17%高く、脳梗塞になるリスクも26%高かった。しかし、夫を失った妻は、夫が生きている妻に比べ、脳卒中のリスクは11%、脳梗塞のリスクも5%しか増えなかった。
ところが、家族に新たに親を呼んできたケースを調べると、男性では、家族構成が変わらない男性に比べ、脳卒中などになるリスクは統計上有意ではなく、ほとんど健康に影響しなかった。しかし、女性では、脳卒中のリスクは49%、脳出血のリスクは89%も増えた。
この結果について、研究班は次のようにコメントしている。
「配偶者を失うと、ストレスが高くなり、飲酒量が増えたり、野菜や果物の摂取が減ったりします。配偶者の喪失による生活習慣の変化が、より強く男性に影響を与えるのではないでしょうか。また、親を家族に迎えると、女性の脳卒中などが上昇した理由には、経済的な負担が増加したことや、女性が親の世話をする機会が多く、その負担が大きくなったと考えられます」