健康ブームやレジャーの多様化の波に乗るなどして、各地にフィットネスクラブが増え、会員数の伸びも堅調という。こうした施設が社会に定着するにつれて、トレーニングをしなければいられないという「依存症」の人がみられるようになっている。
日本とは規模がケタ違いの、フィットネス大国、米国では、こうした依存症の人たちが顕在化。依存症の自覚がないままトレーニングを続けると、精神的な障害があらわれたり、けがの可能性が高まったりするという。
減量、スタイル維持など健康理由で始めて、それが...
米フロリダ州にあるジャクソンビル大学のヒーザー・ハウゼンブラス教授(運動生理学)によると、トレーニング依存症(exercise addiction)の兆候は「世界の人口の0.3~0.5%の人にみられる」という。「この数字だけだと大したことはないが、国単位だと何万人にもなる」。米国の人口は約3億人。同国には90万~150万人いることになる。
同教授は2017年4月、英医師会誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に「Addiction to Exercise(トレーニングへの依存)」と題した研究報告を主筆として寄稿。共著者は、同僚研究者のほか、10年間にわたるトレーニング依存症の経験を持つ患者らだ。
同教授らの研究によると、トレーニングを突き詰め極限まで達すると、その依存症状ももちろん問題だが、副次的な問題も生じてくる。体重維持や減量のためにトレーニングが加速し、それに伴い摂食障害などが起きる。トレーニング依存症の問題は、一次的な問題として過度なトレーニングがあるのだが、それには「基礎病理がない」という。
依存症の危険に対し男女差はないが、男性には過度なトレーニングの一次的な問題が、女性には副次的な問題が現れるのがより多いケースという。