サッカーワールドカップ(W杯)へのアジアからの出場枠が現行の4.5から8に増えると国際サッカー連盟(FIFA)が決定した。
本大会出場へのハードルが大幅に下がることになり、インターネット上では「予選ゆる~くなるなおい」などといった声が多い。日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は「アジア予選の短縮化」も示唆している。
プレーオフ枠を除けば2倍増
FIFAはバーレーンのマナマで2017年5月9日(現地時間)に理事会を開いた。W杯2026年大会における全出場国数が現行の32から48に増えることはすでに決定しており、この日は大陸サッカー連盟ごとの出場枠を決定した。各大陸の出場枠は以下のとおり(カッコ内は現行の枠数)。
・アジア...8(4.5)
・アフリカ...9(5)
・北中米カリブ海...6(3.5)
・南米...6(4.5)
・オセアニア...1(0.5)
・欧州...16(13)
6大陸の予選で合計46枠が決まる。残り2枠は、欧州以外の5大陸から1か国ずつと、開催国が所属する大陸からもう1か国を加えた6か国によるプレーオフで決める。アジアの現行4.5枠のうち0.5枠は大陸間プレーオフで決まっていたので、アジア予選だけで決まる枠数で比較すると4から8へと倍増する。他の大陸と比較してもかなりの増枠と感じられる。
アジアの枠数をこれだけ増やした背景には、FIFA財政へのアジア、特に中国の貢献があるとの見方がある。
FIFAは15年5月に関係者複数人が汚職で起訴され、スポンサーが懸念を表明。新規スポンサー獲得に暗雲が立ち込めていた中、16年3月に中国の不動産企業・万達集団(ワンダ・グループ)がFIFA公式パートナーに、17年4月には中国の家電大手・青島海信電器(ハイセンス)が18年ロシア大会スポンサーに決定した。すでに15年12月には阿里巴巴集団(アリババ・グループ)がFIFAクラブW杯のメインスポンサー契約を締結しており、ここ数年は中国企業がFIFAを資金面で強力にサポートしているとも言える。また、中国は習近平・国家主席が国策でサッカー強化に乗り出していることでも知られる。
さらに、アジアとアフリカの枠数を増やすことで、欧州・南米に強国が偏るサッカーを全世界に普及しつつ、レベルも底上げする狙いがあるという。
「ここまで来たらW杯の有り難みが無いよね」
W杯出場枠が増えたからありがたいかと言えば、日本にとってはそうでもないと見る向きが強い。インターネット上ではこんな声があふれている。
「予選ゆる~くなるなおい」
「もう最終予選も見なくていいな」
「ここまで来たらW杯の有り難みが無いよね」
「多すぎてつまらん、真剣味がなくなるよ」
「緩々で飽きられてくるんだろうな」
「負けてもいい戦いがそこにある」
日本は98年フランス大会以降、5大会連続でW杯出場(02年は開催国枠)を果たしているが、アジア予選は決して楽なものではなかった。テレビやスタジアムでドキドキしながら観戦していた予選の「緊迫感」が大きく減じられると思われているようだ。
ただ、日本が初出場した98年大会は出場国が24から32に拡大された最初の大会で、アジア枠も2から3.5に増えていた。今でこそW杯常連国となりつつあるが、かつて増枠の恩恵を日本も受けていたと言える。
W杯本戦も形式が変わる。現行は4か国ずつ8グループに分かれてグループリーグ(GL)を戦い、上位2か国ずつが決勝トーナメントに進出する。それが2026年大会は48か国を3か国ずつ16グループに分けてGLを戦い、上位2か国ずつが決勝Tに進出する形を取る予定。これまでは予選敗退の場合でも3試合はあったのが、下手をすれば2試合のみで大会を去ることになる。あっさり出場を手にしたW杯が一瞬で終わってしまうという可能性があるわけだ。
こうした状況も見据えてか、17年5月11日の毎日新聞によると、JFAの田嶋幸三会長はアジア枠増加を歓迎した上で、「アジア予選の短縮化」により、本戦に向けた強化に注力できる体制づくりを進める可能性を示した。たとえば、現在アジアは1次、2次予選で12か国に絞り、6か国ずつ2組の最終予選という3段階で行われるが、2次予選で8か国を決定するという方式がありそうだという。