トランプ氏が「絶叫」した時 異例「FBI長官解任」との関係

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   米国のトランプ大統領が2017年5月9日(米東部時間)、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官を突然解任した。FBI長官の任期は10年で、コミー氏はオバマ前大統領が13年に任命。長官職は政治的中立性が重要視されるとされ、任期途中で大統領に解任されるのはきわめて異例だ。

   表向きの解任理由は、16年の大統領選で対立候補だったヒラリー・クリントン氏の国務長官時代の私用メール問題の捜査をめぐる不手際だとされている。一方で、FBIはロシアのサイバー攻撃をめぐるトランプ陣営との「癒着」疑惑(いわゆる「ロシアンゲート」)の捜査を進めていた。トランプ氏は、ロシア関連の報道をテレビで見ると「絶叫することもある」との報道もあり、コミー氏の解任は、捜査妨害が目的だとの見方も出ている。

  • トランプ氏はロシアをめぐるFBIの捜査にいらだっていた (C)FOMOUS
    トランプ氏はロシアをめぐるFBIの捜査にいらだっていた (C)FOMOUS
  • トランプ氏はロシアをめぐるFBIの捜査にいらだっていた (C)FOMOUS

過去には「多大な敬意を」発言も

   ホワイトハウスは、トランプ氏がコミー氏に解任を通告した手紙を公開。それによると、解任の理由は

「私が捜査対象になっていないことを教えてくれたことには感謝するが、あなたが効率的にFBIを率いることができないという司法省の判断に同意した」

と説明されている。トランプ氏が言及している「司法省」とは、セッションズ司法長官とローゼンスタイン副長官のことを指す。「私が捜査対象に~」のくだりは、自らのロシアンゲートとの関与を否定する狙いがあるとみられる。

   司法省の2人が問題視しているのは、FBIが16年に行っていたクリントン氏をめぐる私用メールの問題だ。FBIは、クリントン氏が私用メールで機密情報を送受信していた疑いがあるとして捜査を進めていたが、コミー氏は7月5日に「訴追には相当しない」と発表。ところが、コミー氏は大統領選の投票日の11日前の10月28日に一転、捜査を再開したと発表した。この発表を、トランプ氏は集会での演説で「多大な敬意を表したい」と歓迎していた。さらにコミー氏は投票日2日前の11月6日に、「(刑事訴追しないという)捜査の結論は変わらない」とする書簡を議会に送付していた。二転三転する結論をクリントン陣営は歓迎したが、トランプ氏は激怒した。

   司法省の2人は、捜査権限は司法省にあるにもかかわらず、コミー氏が勝手に捜査の再開や訴追見送りを発表したことが問題だとしている。

NYT紙社説「大統領の失脚につながりうる活発な捜査を...」

   だが、一連の問題が起きたのは、16年7~11月の出来事だ。クリントン氏の訴追見送りがトランプ氏の不興を買ったことで、17年1月の政権交代にともなうコミー氏の処遇が注目されたが、コミー氏は続投。にもかかわらず、就任から100日以上が経過してからの突然の解任劇となった。

   それに加えて、任期途中のFBI長官の解任は、公用機を私用で利用するなどの職権乱用の疑いで1993年に当時のクリントン大統領が解任したケースに続いて、今回が2例目。きわめて異例の事態だ。

   FBIは、ロシアがクリントン氏の陣営にサイバー攻撃を仕掛けてメールを流出させるなどして大統領選に影響を与え、その中でトランプ氏の陣営と連携していたとの疑惑を捜査している。この捜査が解任につながったとの見方も根強い。ニューヨーク・タイムズは5月10日、コニー氏が解任を通告される数日前、捜査のための検察官をはじめとする人員を増強するように司法省に求めていたと報じ、この依頼が解任の引き金になったとの見方を示唆した。社説では、

「コミー氏は、大統領の失脚につながりうる活発な捜査を主導していたため解任されたのだ」

と断じた。

「なぜロシアの捜査がなくならないのか」

   政治専門ニュースサイト「ポリティコ」は同日、コミー氏解任を伝える記事の中で、

「2人の補佐官によると、トランプ氏はロシア関連の捜査に激怒し、ロシアをめぐる話がどんどん大きくなっていくことをコントロールできないことにいらだっていた。側近には『なぜロシアの捜査がなくならないのか』と繰り返し尋ね、トランプ氏を弁護するように要求した。ある補佐官によると、捜査の話題がテレビで流れると絶叫する(scream)こともあるという」

   トランプ政権では、ロシアをめぐって「すねに傷を持つ」人が多い。フリン大統領補佐官は17年2月、就任前に対ロ制裁について駐米ロシア大使と協議した問題が発覚し辞任。コミー氏の解任を進言したセッションズ司法長官も、大統領選中に駐米ロシア大使に2度にわたって面会していたことが17年3月に指摘され、大統領選関連の捜査から外れていた。 いずれも、許可を受けない民間人の外交交渉介入を禁じたローガン法に抵触する可能性があるためだ。

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