慰安婦合意、やはり「再交渉」要求するのか 文在寅新大統領が探る「落としどころ」

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   韓国の新大統領、文在寅(ムン・ジェイン)氏(64)が対日関係で真っ先に直面することになりそうなのが、慰安婦をめぐる合意の問題だ。

   朴槿恵(パク・クネ)政権下の2015年末に結ばれた合意では、慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決」するとしていたが、文氏は再交渉を主張し続けてきた。だが、韓国メディアには合意の再交渉や破棄は現実的でないとする声もあり、日本側も再交渉には応じない方針だ。文氏が国内世論との「落としどころ」をどう探るかが注目されそうだ。

  • 日本政府は引き続き釜山の総領事館前も慰安婦像の撤去を求めていく(2017年1月撮影)
    日本政府は引き続き釜山の総領事館前も慰安婦像の撤去を求めていく(2017年1月撮影)
  • 日本政府は引き続き釜山の総領事館前も慰安婦像の撤去を求めていく(2017年1月撮影)

世論調査では7割が「再交渉」

   2015年12月28日の日韓合意では、日本政府が元慰安婦の女性を支援する財団設立のために約10億円を拠出することを前提に、慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」としていた。だが、合意に対する韓国世論の風当たりはきわめて強く、韓国ギャラップ社が17年2月に行った世論調査では、70%が「再交渉しなければならない」と回答。文氏も合意について「無効にし、再交渉を推進する」ことを繰り返し表明してきた。

   文氏は大統領当選後、慰安婦問題に対する態度を直接的には明らかにしていない。17年5月10日昼に国会で行った演説では、朝鮮半島をめぐる安保情勢に対応するために

「必要であれば、直ちにワシントンに行く。北京と東京にも行き、条件が整えば平壌にも行く」

と述べたが、それ以外に日本や慰安婦問題に関する言及はなかった。ただ、

「選挙の過程で私が行った約束を誠実に守る」

とも発言しており、従来の「再交渉」路線も維持される可能性がある。一方、日本側は再交渉には応じず、引き続き合意の履行を求めていく。菅義偉官房長官は5月10日午前の記者会見で、合意は

「国際社会から高く評価され、日韓それぞれ、責任を持って実施をしていく。このことがきわめて重要」

だとして、

「引き続き韓国側に粘り強く、あらゆる機会をとらえて、合意の着実な実施を求めていきたい」

と述べ、ソウルの日本大使館や釜山の総領事館前に設置された慰安婦像についても引き続き撤去を求める考えだ。安倍晋三首相が文氏に直接合意の履行を求める可能性にも、

「当然、合意をしていることなので、そうしたことはお互いの将来を考えた中で責任を持って進めていこうという話は、当然されることになるだろう」

と含みを残した。

合意破棄すれば「韓日関係そのものが完全に破綻」

   韓国国内からも、メディアを中心に文氏の主張が現実的でないという主張が出ている。朝鮮日報は16年12月17日の「慰安婦合意・GSOMIA破棄、文在寅氏は守れない約束をするな」と題した社説で、合意について

「国際社会と結んだ約束であり、締結からすでに1年近くが過ぎた。これを今になって破棄するとなれば、韓日関係そのものが完全に破綻するだろう」

と警告。

   聯合ニュースも文氏の大統領当選後の17年5月10日の記事で、

   「韓国政府がこれ(日本側が再交渉に応じない方針)に対抗し、一方的に再交渉を推進したり、合意を破棄したりすれば、現実的に一定程度の外交的負担を甘受しなければならない」として「解決策は単純ではない」と指摘。その上で、次のように、時間をかけて落としどころを探るとの見方を示している。

「慰安婦合意について性急に政策を進めた場合、日本と正面対決になり、新政府が取り得る政策の幅が狭くなる恐れもある。そのため、文政権は今後『再交渉』『追加交渉』『破棄』など合意をめぐる様々なシナリオを念頭に置いて外交戦略を模索し、国民と意思疎通を図るとみられる」

   文氏は、首相に李洛淵(イ・ナギョン)全羅南道(チョルラナムド)知事をあてる人事も発表。李氏は東亜日報の東京特派員を務めたこともあり、国会議員転身後は韓日議員連盟副会長を務めた。こういった「知日派」を重要ポストに置くことで、対日関係に配慮した可能性もある。

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