「フリーブックス、無料で便利だったのに...」 違法書籍サイト閉鎖悲しむ、若者たちのモラル

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   「ネットにアップされているモノ=無料という意識が、いまだに根強い。安倍(晋三首相)さんも道徳より、学校現場での著作権教育に力を入れた方がいいのでは?」――ITジャーナリストの井上トシユキさんは、そう苦笑いする。

   2017年5月3日、違法書籍サイトとして一部でその名を知られていた「フリーブックス」が、突然消滅した。運営会社など一切不明、人気漫画など5万タイトルを無料で、そして無断で公開していた「非常に悪質な海賊版サイト」(小学館)である。ところがこの違法サイトの閉鎖をめぐり、意外にもツイッターなどでは、「悲しみの声」があふれているのだ。

  • フリーブックスのトップページ(インターネットアーカイブのコピーより)。週刊少年ジャンプなどもアップされている
    フリーブックスのトップページ(インターネットアーカイブのコピーより)。週刊少年ジャンプなどもアップされている
  • 「移転先教えます」というツイートも
    「移転先教えます」というツイートも
  • フリーブックスのトップページ(インターネットアーカイブのコピーより)。週刊少年ジャンプなどもアップされている
  • 「移転先教えます」というツイートも

「さいあく」「何をして学校を乗り切れと」

「フリーブックス閉鎖マジやん 悲しすぎて涙でてくるわ」
「フリーブックス死んだ。これから何をして学校を乗り切れというんだ」
「え...フリーブックスなんで閉鎖したん 昨日いきなり漫画読めんくなっておかしかったけど、なんで!?さいあくー」
「フリーブックスなくなるとかやめてつらい」

   つぶやいているアカウントを見ると、高校生や大学生など、比較的若い世代のユーザーが目立つ。また、少し前のツイートなどを調べると、「先輩にフリーブックスってサイト教えてもらった」「大学の友達の中で流行ってる」「俺も今日友達に教えてもらった」といった声も多く、いわば「リアル」の世界の口コミで、かなり広がっていたことも確認できる。

   さらに7日ごろからはツイッターで、「1500円払えば、フリーブックスの移転先を教える」と称する人物が相次いで出現、「教えてください!」というユーザーも出る騒ぎも起きている。

   若者の間でここまで広まっていた「フリーブックス」とは、いったい何者なのか。

出版社を激怒させた「謎の海賊版サイト」

「大雑把な数字ですが、1万点ほどの作品が違法にアップロードされたとみています。他の出版社とも協力して、弁護士と対応を検討していたところでした」

   9日、J-CASTニュース編集部の取材に対し、講談社の担当者はこう説明する。

   フリーブックスなるサイトは、2016年末ごろからその存在が確認されていた。一応、ユーザーが自作のコンテンツを投稿できるサービス、という立てつけを取っていたものの、現在確認できるアーカイブには、そうした作品はほとんど見当たらず、ほとんどは出版社から公刊されている書籍ばかり。

   そのラインアップを見ると、漫画単行本はもちろん、「ジャンプ」「マガジン」などの週刊少年誌、さらには「男の隠れ家」のような大人向けの雑誌、新書、そしてアダルト作品まで、実に多種多様だ。サイトのデザインもなかなか洗練されており、一見すると出版社や書店などのものと遜色ない。そして、すべてが無料なのである。

   もちろん、出版社としてはたまったものではない。

「同サイトで行われていたことは、著者の権利を踏みにじり、正当に書籍・雑誌を購入した読者が損をする許しがたい行為です」(講談社広報室のコメントより)

   講談社や小学館など、大手出版社は連携を取りながら、刑事・民事での法的措置を視野に入れ、対応の準備をすでに進めていた。一方ネット上では5月1日、はてな匿名ダイアリーにその問題点を指摘する記事が公開され話題となり、その後サイトはつながりにくい状態に。そして3日、サイトは突如消滅した。

ネットの広がりに追いつかぬ著作権意識

   フリーブックスは運営者情報などをほとんど明かしていない。ドメイン情報やサイトの構造の共通性などから、他の違法アップロードサイトや、アダルト系サイトなどとのつながりがネット上では指摘されているが、正体は定かではない。

   こんな怪しいサイトが、ここまで支持を集める現状について、前述の井上トシユキさんは、

「おそらくユーザーは、違法であるということすら意識していないのでしょう。違法アップロードで逮捕された事例は過去にも何度もありましたが、それが今の若い人たちに伝わっていません。ネットが一般化する一方、著作権についての啓蒙が追い付いていないのです」

と分析、こう提言する。

「まずはやはり著作権について、子どものうちから教えていくべきではないでしょうか。親などが話してもいいのですが、実際には難しい。やはり学校教育の現場で、常識を伝える必要があると思います」
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