北海道函館市が、「ふるさと納税」の寄付金の使い道に2017年4月から大間原発(青森県大間町)の建設差し止め訴訟の費用を加えたところ、約1か月間で630万円が集まり、「ふるさと納税」全体では1000万円を超え、前年度1年間の合計とほぼ同じ金額になるなど盛況だ。
ネット上では、「ふるさと納税」を原発建設差し止め訴訟の費用に充てることに違和感を覚える人が続出しているが、市の担当者によれば費用が足りないから導入したわけではなく、また、必ずしも建設阻止が最終的な目標ではないという。では何が目的でこうした取り組みをしたのだろうか。
訴訟への寄付が「納税」件数で75%、金額は62%
J-CASTニュースが5月9日に函館市役所に取材したところ、「ふるさと納税」の使い道に原発訴訟を加えPRし始めたのは4月3日から。5月7日までに全体で384件の寄付があり、金額は1015万2000円で、うち訴訟への寄付が件数で75%、金額は62%を占めた。担当者は、
「想像を遥かに上回る寄付の数で、我々としては心強い。福島の事故という現実があるため、建設を止めてほしいという強い思いを感じる」
と語った。関東、近畿圏からの寄付が圧倒的に多いという。
こうしたニュースに対しツイッターや掲示板では、
「ふるさと納税の使いみちとして、原発工事差し止めの訴訟費用っておかしくね?政治的な意図を感じるんだけど」
「ふるさと納税の返礼は原発からの安全。函館市のふるさと納税返礼品は原発訴訟に」
「函館市にふるさと納税しようと思ったが原発訴訟が主目的なら納税するわけにはいかない。原子力デマを利用したプロ市民どもの片棒など担げない」
「市民の安全を守るための訴訟なんだから、公金の無駄遣いってわけでもなかろうに」
などといった賛否両論が出る事になった。
どうして函館市は「ふるさと納税」の使い道に原発訴訟を加えたのか。それは函館市が自治体として初めて14年4月に国と事業者のJパワーに対し建設差し止め訴訟を東京地裁に起こしたことに遡る。
「訴訟をしているという外部に向けたアピール」
別の市役所担当者によれば、訴訟直前から訴訟費用の寄付を募っている。17年3月末までに約5600万円が集まっているが近年は寄付のペースが鈍っていて16年度は約90万円にとどまった。そこで工藤壽樹市長のアイディアがあり、「ふるさと納税」で寄付金を募ることになったという。
「訴訟費用が足りないということも言われていますがそれは違っていて、目的は工事差し止め訴訟をしているという外部に向けたアピールであり、それによって国に議論の土俵に上がってもらうという取り組みなんです」
と担当者は明かした。
福島原発事故以降、国は事故の際に危険となる地域をこれまでの8~10キロから30キロに変更した。函館市は大間原発から最短23キロの位置にあり、危険地域に含まれたわけだが、同意を得るどころか市や道南地域への説明もないままに建設が再開されたという。さらに地域防災計画や避難計画を定めることを義務づけた。こうしたことは整合性を欠いているとし、12年から道南の自治体や議会、経済界などが名を連ね建設の無期限凍結を求めるなど度々抗議をしてきたものの、国はそれを無視続けてきた。そのため最終手段としての訴訟を起こし闘っている。
「まずは建設に対する『同意権』を獲得すること。これがスタート時点となり、得られた後に議会、市民に判断して頂く。そうした流れで進めて行く計画になっています」
と担当者は語った。