更年期障害とまぎらわしい「橋本病」とは
ところで、更年期症状とよく似た、女性特有の病気があることはご存じだろうか。40~50代にかかりやすく、更年期世代と重なる点が厄介だ。初めて病気の論文を書いた医師の名にちなんで「橋本病」(正式名:甲状腺機能低下症)という。のどにある甲状腺に慢性の炎症ができ、甲状腺ホルモンの分泌が悪くなって起こる。集中力の低下、だるさ、肌荒れ、冷え、むくみ...と症状のほとんどが更年期症状と類似する。
坂本恵子さん(仮名=55歳)は45歳の時、引っ越しなどのストレスが重なり、倦怠感や気力の衰えを感じていた。「更年期かな」と放置していると、特に多く食べないのに体重がどんどん増えた。ある日、飲み物を飲んだ際、のどに違和感を覚えた。この体重の急激な増加とのど(甲状腺)の腫れが更年期障害と異なる特徴だ。体重が急に増えるのは、体全体がむくむからだ。
坂本さんを診察した埼玉医科大学総合医療センターの松田昌文医師が、こう説明する。
「橋本病は、9対1の割合で圧倒的に女性に多い病気です。放置したままにすると、心不全や意識障害につながり、死に至る場合もあります。遺伝が原因になるケースが多いので、家系を調べることも有効です。健康診断で急にコレステロール値が異常値にまで上がったら、疑った方がいいでしょう。一般内科を受診し、血液検査で甲状腺機能を調べれば、すぐわかります」