ゴールデンウィーク中に阪神が広島を抜いて単独首位に浮上した。9点差を跳ね返すなど打線の爆発が光る最近の阪神だが、元プロ野球投手の石井一久氏(43)は立役者に捕手・梅野隆太郎(25)の存在があると話す。特に言及したのは「盗塁阻止率」だ。
野球解説の野村克也氏(81)も「梅野はきちっとした野球で育ってほしい」とその将来性に期待を寄せるが、現時点ではリードの「未熟さ」も指摘している。
石井氏「捕手は盗塁阻止で投手との信頼関係をつくる」
阪神は広島との2017年5月5日~7日の首位攻防戦を3連勝で締め、3日からの連勝を5に伸ばした。6日は、5回表までにつけられた9点差を6回ウラの7得点などで跳ね返す猛攻で首位に浮上した。7日も勢いそのままに、3番・糸井嘉男(35)、4番・福留孝介(40)、6番・鳥谷敬(35)らベテランが躍動して6得点での完封勝利など、打線の好調が目立つ。
だが、石井氏は7日放送の「HERO'S」(フジテレビ系)で、阪神を陰で支える重要選手に捕手の梅野をあげた。特筆すべきはセ・リーグトップ.357の「盗塁阻止率」だという。元大リーガーの石井氏は、その重要性を投手目線で「いるだけで、気持ち的に楽ですね」と話す。
「捕手はここ(盗塁阻止)で投手との信頼関係をつくる。梅野選手が刺してくれるという信頼から、投手はボール球を投げられる。逆に梅野選手も投手がちゃんとクイックで投げてくれると信じられる。捕手は気配りの存在。投手を立てる(のが1つの役割)」
リード力も上向いてきた。7日は先発・能見篤史投手(37)が5回2/3を無失点で抑えて6対0で完封勝利。能見は今季初勝利をあげた。試合後の梅野は、1回表にいきなり直面した1死満塁のピンチを冷静に振り返っている。
「(能見投手は)フォークで三振を取れるピッチャー。やっぱりそこで自分が引いてしまうと良くないので、とにかくフォークで、何球続けてでも三振がほしいところだった。丁寧に、球数が多くなっても無失点に抑えることを意識したゲームで、良かったなと思う」
実際、梅野はこのピンチを広島の5番・新井貴浩(40)、6番・ペーニャ(31)と、フォークで2者連続三振に導いた。能見は6回途中で降板するまでに8つの三振を奪った。
野村克也「梅野には反省してほしい」
今季ほぼ全試合に出場し、正捕手に定着している梅野は「出られているからこそ、去年までとは違う色々な配球で、パターンも変えながらやれている」という。これまでは「その日の良い球」を多く含むリードだったが、今はそれぞれの打者との前回対戦時のデータをもとに「根気よく、根拠のあるサインを出せる」と口にした。「毎試合意味のあるゲームができていると思う」と積み重ねを実感している。
一方で、野村氏は伸び盛りの25歳に「愛のムチ」を見舞った。5月7日放送の「S☆1」(TBS系)で野村氏は、7日の試合、5回表の2死1、2塁で丸佳浩(28)を迎えた場面の梅野のリードを分析。カウント1ボール0ストライクからのインコースに要求したことに「キャッチャー野村としては頭に浮かんでこない」と厳しい表情を見せ、カウント2-2からインコースにミットを構えた際にも野村氏は首を傾げた。その投球は一ゴロで打ち取ったが「結果オーライ。狙われてるじゃん。これで満足していたらダメだ。間違っていたか正しかったか、梅野には反省してほしい。俺にはこの配球は間違い」と喝を入れた。
ただ、野村氏は「梅野って、俺んとこにあいさつに来た。まったくつながりがないのに、だよ。プロ野球界に60年いるけど、配球のことで色々聞いてきたのはこいつだけ」とその熱意に驚いた様子。「優勝チームに名捕手あり。俺が(ヤクルトの監督時代に)良い思いをさせてもらったのは、古田(敦也)のおかげ。キャッチャーというのはチームにとってすごく大事なポジション。ぜひ梅野はきちっとした野球で育ってほしい」と言葉を贈っていた。