「ファンは汚染物質なのか?」――。女性アイドルグループ「CY8ER(サイバー)」が、ファンとの「ハグ(=抱擁)」イベントに本格的な防護服姿で登場したことが、インターネット上で賛否を広げている。
防護服姿でファンと接するアイドルの姿を見たネットユーザーから、「オタクを馬鹿にしているように見える」との批判が出ているのだ。その一方で、イベントに参加した当のファンからは好意的な反応が相次ぎ、イベントは大好評だった。はたして、その理由は...。
本格的な化学防護服と防じんマスクを着用
2016年12月24日結成の「CY8ER」は、「世界を騒がすサイバーテロアイドル」をコンセプトに活動する6人組グループ。中心的メンバーの苺りなはむさんは、人気アイドルグループ「BiS」の元メンバーとして知られる。
そんなCY8ERのハグイベントは、17年5月6日に日本武道館(東京・千代田区)で行われたイベント「武道館アイドル博2017」の中で実施された。
この日メンバーが身に付けていたのは、アスベスト除去などの作業現場でも実際に使われている化学防護服と防じんマスク。メーカーが公表している仕様によれば、どちらも放射性物質の防護にも適応しているタイプだという。
イベントの参加費用は100円で、6人のメンバー全員が順番に後ろから参加者を抱きしめてくれる。参加したファンの報告によれば、メンバーは防護服の下にも「クッション」を身に着けていたという。
さらに、ハグ代とは別に2000円を支払うと、選んだメンバー1人との「キス写真」も撮影できる。ただ、これも「防じんマスク」越しで、決して本当にキスができるわけではなかった。
この風変りなハグイベントは、一部の参加者が会場の様子をおさめた写真をツイッターで公開したことで注目を集めることになった。ツイッターやネット掲示板には、
「これもうファン=汚染物質って言ってるようなもんだろ」
「客馬鹿にしてんのか」
「着ぐるみとかもうちょっと配慮があってもよかったと思う アイドル側がファンをどういう目で見ているのか分かり過ぎて辛い」
などと、イベントの内容に否定的な意見が出ている。
なかには、イベント時のメンバーの服装が「原発作業員のように見える」などとして、「放射性物質扱いかよ」「オタには原発並みの対応が必要なのか」と揶揄する声も出ていた。
参加者「100円なら悪くない」
このように、批判的な声が目立つCY8ERのハグイベントだが、意外にもファンからの反応は悪くないようだ。実際にイベントに参加したユーザーのツイートを見ると、
「かなり防護服厚めだけど100円なら悪くない。結構ギュって後ろからくるから」
「後ろからハグされながら『来てくれてありがとう』とか言ってもらえるの悪くない」
「クッション挟んだとしても楽しい」
などと好意的な反応が目立つのだ。実際、J-CASTニュースの取材に応じたファンの1人は、
「耳元でメンバーから囁かれるのはみんなドキドキしたり嬉しかったりという反応だったので全体的に好評でした。 ループしてる人もいたくらいです」
と説明。その上で、「SNS上にはアンチもいましたが、会場内では大好評でした」とも振り返った。
そのほか、メンバーが防護服で登場したことに「安心」した様子のファンも目立った。
実は、CY8ER側の事前告知では、参加費100円でハグイベントを実施することしか伝えていなかった。そのため、事前の告知だけを見たファンの中には、応援するメンバーがファンと抱き合うことに不快感を示す声も出ていたのだ。その後、今回のイベントの趣旨が明らかになると、
「CY8ERは安心して応援できるアイドルだと確信した」
「昨日心配したの 返してくれる?」
「いい意味で裏切られました」
といった声も出ることになった。上述した参加者も取材に対し、「(イベントの内容に不安を抱くファンも多かったが)結局インパクトのあるネタに走ってくれたのでみんなホッとして笑っていました」としていた。
このハグイベントの狙いは何だったのか。
J-CASTニュースは17年5月8日昼、CY8ERが所属する「ICIGO STYLE(イチゴスタイル)」に、(1)なぜ防護服の格好をさせたのか、その狙いは(2)ファンの反応はどうだったか――などの質問をまとめたメールを送付したが、同日19時までに返答はない。
(5月8日23時35分追記)
ICIGO STYLE代表でCY8ERメンバーの苺りなはむさんは8日23時過ぎ、J-CASTニュースの取材に応じ、今回のハグ企画の狙いについて、
「もともとこのイベント自体、武道館でライブができると思って参加したんです。でも、詳細を聞いてみると、物販しかできなかったんです。そこで、ファンを驚かせられるような面白いことができないかなと考えて思いついたのが今回のハグイベントでした」
と説明。その上で、服装に防護服を選んだ理由については、
「インパクトのある格好でやりたいと思ったのが一つ。また、アイドルなので直接ファンと抱き合ったりキスしたりというのは何か違うなあと思って、防護服にしました」
と話した。