和装履物の老舗「聞いたことはないですね」
江戸時代(1865年)創業の和装履物専門店、丸屋履物店(東京都品川区)に見解を聞いたところ、5代目の榎本準一さんは「デパートに下駄を履いていくのは今も昔もマナー違反ではありませんよ。聞いたことはないですね」と話した。今回のテレビ放送は見ていたという。
それで思い出した参考として、以下のように語ってくれた。
「昔の国内の一部ホテルでは、『下駄の二枚歯で絨毯(じゅうたん)が傷む』という理由で、履物をスリッパに替えてもらうようにしていたところがありましたが、今の絨毯は丈夫になっていて現在そのようなルールがあるとは聞きません。これもホテルでの話で、デパートではそもそもこうした配慮を必要としていた話はありません」
「昔」というのは前の東京五輪(1964年)の頃だという。
「下駄だと歩く音が響くからマナー違反、という可能性はないか」との推測にも、榎本さんは
「デパートでのマナー云々以前に、下駄でうるさくなるのは引きずって履いてしまっている証拠です。正しく履いて歩いていたらカランコロンという音は聞こえません」
「和装が主流の時代、下駄は誰もが履いていました。冠婚葬祭には草履を履きましたが、そうでなければ外出用の洒落た服装にも基本的に下駄を合わせていました。下駄はそれほどくだけた履物ではありませんよ」と榎本さんは話している。