情報セキュリティー関連技術者は「2万2000人足りない」
また、同年7月には、セキュリティーの研究者が米自動車大手クライスラーの「コネクテッドカー」システム(スマートフォンを使って、エンジンの起動やGPS〈全地球測位システム〉で車の現在位置を把握できるシステム)の脆弱性をついてハッキングできることを証明。第三者がスマートフォンを使って遠隔操作でエンジンを切ったり、ブレーキを操作したりすることができることがわかった。その結果、クライスラーは約140万台のリコールに追い込まれた。
2014年には、ドイツの製鉄所のオフィスネットワークが標的型攻撃にあい、制御システムが不正操作されて溶鉱炉が損傷する事件も起きている。
日本に目を向けると、取り組みは海外に比べて大きく遅れている。最大の問題は人材の不足だ。IPAによると、従業員100人以上の国内企業の情報セキュリティー関連技術者は約23万人。十分な防御体制を整えるには2万2000人足りないとされ、育成が急務だ。
経産省は「国内では社会インフラが途絶えるようなサイバー攻撃の事例は報告されていない」としているが、電力、ガス、通信といったインフラは、防御に失敗すれば社会機能のマヒにつながる。特に、2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控えた日本のインフラは、ターゲットになりやすい。
同センターから巣立った中堅社員らが、社に戻って、そこで人を育て、まとまった人数で活躍するようになるまでには何年もかかる。ようやく国を挙げて動き始めたが、国と企業の両者が二人三脚で育った人材をどう生かすかが課題だ。「日頃からの経営陣のセキュリティー対策と心構えが重要」(経産省幹部)。まさに対策は待ったなしだ。