福井大学医学部の研究チームは、花粉症などのアレルギー症状を引き起こすことで知られるマスト細胞が、結核菌の感染を防ぐはたらきを世界で初めて発見したと発表した。
論文がこのほど、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されたのを受け、研究チームの教授らが2017年4月27日に同大で発表した。
福井大研究チームが世界で初めて仕組みを解明
マスト細胞のはたらきについて新たな発見をしたのは、定清直教授(ゲノム科学・微生物学)と同大附属病院呼吸器内科の本定千知医師らの研究チーム。
マスト細胞は血管が通る組織に存在し、病原菌に対し免疫反応を起こすことで身体を防御する重要な役割を持つ。免疫反応の際にヒスタミンなどを放出し、これが高じると気管支ぜんそくや花粉症などアレルギー反応を引き起こす。
いわば悪役と知られているマスト細胞だが、定教授らによると、研究チームは、その細胞膜にある受容体たんぱく質「ミンクル」が、結核菌の成分を受け入れて作用することでさまざまなたんぱく質の働きを促し、体内免疫を活性化させ、ヒトの体を結核菌から守る自然免疫のはたらきをしていることを発見した。
実験では、細胞培養の実験や遺伝子工学の応用や薬剤による阻害実験、さらに最新のゲノム編集技術を使用したという。
定教授は今後の展望について「結核菌の新たな予防法や治療法の開発、分子標的治療薬の設計につなげていければ」と述べた。