千葉・幕張メッセで2017年4月19日、「国際ドローン展」が開催された。今回は、その出展を中心に、ドローンを使った個性的な動きを紹介したい。
ビジネス、教育、地域貢献などさまざまなジャンルの取り組みが紹介される中、一台のドローンが記者の目に留まった。機体の先に付けられていたのは、「スピーカー」だ。カメラならよく見るが、これはいったい?
「怪獣の鳴き声」などで威嚇
ブースに立っていた担当者に尋ねてみた。
「このドローンは、福島県の浜通りで、イノシシを追い払うために使ったんです」
イノシシをドローンで?
東日本大震災で大きな被害を受けた福島県の浜通り地方では、住民の避難区域を中心に野生動物の増加と、それに伴う被害が問題化している。
特に厄介なのが、イノシシだ。我が物顔で町を闊歩するイノシシを、なんとか追い払う方法はないか。
そこで白羽の矢が立ったのが、ドローンだった。国産ドローンメーカーのエンルート(埼玉県)が機体を開発し、関連会社のエンルートM's(福島市)が地元の要望をくみながらカスタマイズ、そして完成したのが、この対イノシシ用ドローンだという。
4月14日には初飛行。搭載したスピーカーから、特撮作品で使われる「怪獣の鳴き声」などさまざまな音を鳴らしながら、福島の空を飛びまわった。「まだ実験は始めたばかり」とのことで、具体的な効果などはわからないそうだが、さすがにイノシシも驚くだろう。
イノシシなどの増加に悩まされるのは、福島ばかりではない。この取り組みが成功すれば、過疎地や大型農場などでの利用も視野に入ってくる。
飛行機型ドローンも登場
会場を歩いていると、人の絶えない小さなブースがあった。韓国系企業の「KEVAドローンJapan」だ。
展示されていたのは、まるで飛行機のようなフォルムのドローンだった。その名も「KD2マッパー」。機体は圧縮発泡スチレン、これにプロペラが取り付けられた構造となっている。
飛ばすときには、機体を持ち上げて、ちょうど紙飛行機のように前方に向けて「投げる」。あとは、あらかじめ指定したルートのとおりに飛行してくれる。
ドローンといえばいわゆる「マルチコプター」型が主流だが、こうした「翼のついたドローン」も最近、徐々に注目を集めている。たとえば大手のParrotは、2016年9月に「Parrot Disco」を発売した。ビックカメラ新宿西口店のドローン売り場でも見かけたが、その特徴的なフォルムはひときわ目を惹く。
こちらの「マッパー」はその名の通り、地図の作成に特化した機体だ。基本的に法人向けで、お値段も200万円弱を想定しているそうだが、性能では他社の製品には負けない、と担当者は胸を張る。
「翼があることで、風の影響を受けず安定して飛ぶことができます。また機体は軽いので、その分バッテリーを多く積め、1時間以上の飛行が可能です」
楽天版ドローン配達「天空」
ドローンをめぐる取り組みといえば、Amazonが進める「ドローン配達」が、最も注目度の高いものの一つだろう。2016年12月には、イギリスで実験運用が始まった。
Amazonには負けていられない!とばかりにこの日、会場に出展されていたのが、楽天がACSL(千葉市)と共同開発したドローン「天空」だ。もちろん、配達への利用を視野に入れており、2キロまでの荷物を運ぶことができる。
「その第一歩として」(担当者)、2016年から行っているのが、千葉県内のゴルフ場で、利用客に飲み物などを運ぶサービスだ。この5月には、「母の日」イベントとして、ドローンを使ってゴルフ場内の客に「サプライズプレゼント」を届ける、という企画も予定している。
とはいえ、現状では「ドローン配達」実現への道は険しく、担当者も「日本では規制なども厳しいですから......」と話していた。