横綱・稀勢の里(30)が稽古総見を「無断欠席」し、方々で物議を醸している。
無断欠席の原因は、所属部屋の田子ノ浦親方(元前頭八枚目・隆の鶴、40)が日本相撲協会への連絡を忘れていたからだった。親方は批判を集めることになったが、一部からは協会に対しても「ぼんやりしすぎ」との声があがっている。
稀勢の里に「自覚を持たないと」
日本相撲協会の諮問機関・横綱審議委員会が主催する稽古総見は横綱審議委員が場所前に力士の稽古の様子や仕上がりをチェックするもので、毎年東京開催の1、5、9月の場所前に両国国技館で行われる。
2017年も夏場所直前の5月3日に行われた。5月だけは毎年入場無料で一般公開しており、今回は19年ぶりに誕生した日本出身横綱である稀勢の里の人気もあって、前年より約1000人多い約8000人が集まった。徹夜で開場を待つ客もいたという。
ところが、その稀勢の里が姿を見せなかった。当初は春日野・広報部長も「欠席理由は分からない」とし、稀勢の里に対して「自覚を持たないと。もう大関ではないのだから」と苦言を呈していた。
それが実は田子ノ浦親方の「無連絡」が原因だったと発覚した。稽古総見を欠席するには、部屋の親方が事前に日本相撲協会に理由を含めて連絡する必要がある。4日付スポニチアネックスの報道によると、稀勢の里は2日夜に稽古総見欠席の意向を親方に伝えていたが、田子ノ浦親方は「僕の不手際。迷惑掛けてしまって申し訳ない」と連絡を忘れていたのを認めた。
稀勢の里本人は無断ではなく、正式な手続きを経て欠席したつもりだったが、田子ノ浦親方がうっかりしてしまったということだ。春日野・広報部長も「(稀勢の里は)横綱としての自覚を持たないと」としつつ「(欠席するなら事前連絡するよう)『師匠』に言っておいてくれ」と稽古総見に出席した同門の関脇・高安に伝えたといい、親方の不手際を責めている。
「相撲協会も駄目だ」
欠席の理由は、けがにある。稀勢の里は奇跡の逆転優勝を遂げた先の3月場所で左大胸筋損傷などを負い、4月の春巡業は協会に診断書を提出した上で全休している。しかしそれでも、横審の北村正任・委員長(76)は稽古総見欠席を受け「(稀勢の里は)土俵へ上がれなくても、まわしを締めた姿をお客さんに見せてほしかった。体調が万全ではないのでそれはそれでいい」と残念がったという。
4日放送の「ひるおび!」(TBS系)では今回の騒動を取り上げ、番組レギュラーの八代英輝・弁護士(52)が「親方との打ち合わせが(稽古総見の)前夜というのは遅すぎるのではないか」と、ギリギリになって欠席を決断した稀勢の里の姿勢に物申していた。
一方、番組では相撲協会にも責任の一端があるとする見方も出た。稀勢の里は夏場所での完全復帰に向けて一歩一歩調整を進めてきており、5月2日になってようやく三段目力士相手に相撲を取り始めていた。幕内力士とぶつかり合う稽古総見を欠席する可能性は十分考えられたと言えなくもない。「横綱論」などのコラムを日本経済新聞に寄稿していた落語家・立川志らく(53)がスタジオ出演し、「喝ですよ」と切り出した。
「親方の連絡ミスは問題外。稀勢の里は行って姿だけでも見せるべきだった。それに、相撲協会も駄目だ。8000人もお客さんが集まると見込んでやっている。直接連絡して『来てくれないと困る』と言わないといけない。ぼんやりしすぎだ。お客さんの目当ては稀勢の里なんだから」
今回の件を受けて、インターネット上でも「協会側も遅れた時点で確認しろよ」「ここで本人に罪着せる協会が意味不明」「稀勢が負傷明けなのはわかってるしイベントの目玉商品なんだから協会側からも出欠伺いしとけよ」と協会に対する疑問の声があがっていた。