アナフィラキシー反応(アナフィラキシーショック)を抑える物質を発見したと東京大学大学院の研究グループが2017年4月27日に発表した。
アナフィラキシーショックは、ハチに刺されたときや食物アレルギーで起こり、しばしば重篤な症状が現れる。同グループでは今回の研究が治療法の開発につながることが期待されるとしている。
新しい治療法につながることを期待
アナフィラキシーショックは、免疫細胞の一つであるマスト細胞が活性化して、ヒスタミンやロイコトリエンといった炎症物質を大量に放出することでおこる。マスト細胞は全身に分布していて、その活性化がじんましんの原因になることが知られている。
アナフィラキシーショックの症状として、じんましんのほか呼吸器症状や血圧や体温の低下、意識の喪失などがあり、重篤な場合、死亡するケースもある。厚生労働省の「人口動態統計」によると15年に23人、14年に25人が亡くなっている。
マスト細胞は、ヒスタミンやロイコトリエンとともに、プロスタグランジンD2(PGD2)という酵素を大量に産生することが分かっていたが、その生理活性については分かっていなかった。
今回の研究で、PGD2合成酵素を欠損させたマウスや、PGD2受容体であるDPを欠損させたマウスを観察すると、アナフィラキシー症状が劇的に悪化。そして、DP受容体を刺激する薬を投与すると、アナフィラキシー時にみられる血管透過性の亢進がおさえられ、その症状を改善することに成功した。
マスト細胞はヒスタミンなどを放出することでアナフィラキシー反応を引き起こすとともに、その反応の行き過ぎを抑えるために、PGD2を同時に産生していることが判明。研究グループは、PGD2を応用することで新しいアナフィラキシーの治療法につながることが期待されるとしている。