日本国憲法施行から70周年を迎えた2017年5月3日。読売新聞(東京本社最終版)は朝刊1面のトップ項目に「憲法改正20年施行目標」の見出しで、安倍晋三首相のインタビューを掲載した。
ここで安倍首相は、東京五輪・パラリンピックが行われる20年を目標に、憲法9条に自衛隊の根拠規定を設けるなどの改正を行いたいとの考えを示した。具体的な改正内容や時期を明言したことで、改正に向けた具体的な議論が加速しそうだ。
「党の改正草案にこだわるべきではない」
安倍首相は、これまでも憲法改正について「私の在任中に成し遂げたい」(16年3月の参院予算委員会)などと意欲を示していた。また17年5月1日に行われた、超党派の新憲法制定議員同盟(会長:中曽根康弘元首相)主催の「新しい憲法を制定する推進大会」では、
「憲法改正という大きな目標に向かって、この(施行70周年の)節目の年に、必ずや歴史的な一歩を踏み出す」
と、17年中に改正へ向け動き出す決意を示していたが、今回の読売インタビューは、さらに一歩踏み込んだ内容となった。
インタビューでは、従来の自民党が取ってきた立場と比べて「軟化路線」に転じた。例えば、自民党が野党時代の12年に作成した憲法草案では、9条で「国防軍」の保持を明記していた。しかし、今回のインタビューでは、
「党の目指すべき改正はあの通りだが、政治は現実であり、結果を出していくことが求められる。党の改正草案にこだわるべきではない」
とし、1項の「戦争放棄」、2項の「戦力の不保持」を残しつつ、「自衛隊の存在を記述するということを議論してもらいたい」とした。
各党との連携もそうだ。安倍首相は、「教育無償化」を憲法改正の柱に置く、日本維新の会について「積極的な提案を歓迎する」とし、9条に加え、教育無償化を優先した自民党の改正案を、速やかに衆参両院の憲法審査会へ提案する方針を示した。また、他の野党議員に向けても「案を示し、賛成して頂ける方なら、どなたでも賛成してもらいたい」と呼びかけた。