スギ花粉症にカプセルを飲む免疫療法薬 九州大学がヒョウタンから駒のアイデア

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腸までの運び役にありふれた食品添加物を工夫

   現在行なわれているスギ花粉症の免疫療法では、皮膚の下にスギ抗原を注射し徐々に慣らす「皮下免疫療法」と、舌の下にスギ抗原をふくみ徐々に慣らす「舌下免疫療法」があるが、いずれも3~5年間、毎日続けなければならない。しかし、このカプセル療法だと、スギ花粉飛散前と飛散中の合計2か月間毎日飲むだけでよい。ずいぶん簡単な方法に思えるが、なぜ、ほかの研究者は思いつかなかったのだろうか。中川教授はこう説明した。

「スギ抗原を飲んで慣らす方法は20~30年前にも試みられました。しかし、裸のままの状態のスギ抗原を飲みこむ方法がとられ、すぐに胃で分解され激しい副作用を起こしたため打ち切られました。当時は、スギ抗原を多糖体で包んで腸まで運ぶ方法を思いつかず、ほかの免疫療法の研究に関心が移ったのです。ガラクトマンナンはマメ科の植物の種子から作られる、ありふれた多糖体です。様々な食品の添加物に使われ、とろみの原料にもなります。だから、安全性が高く、副作用の心配もありません」

   短期間カプセルを飲むだけでいいとは、花粉症に悩む人には朗報だが、2か月飲んだだけで体質が改善され、次のシーズンにも効くのだろうか。また、実用化されるのはいつごろになるのか。中川教授はこう語った。

「薬の持ち越し効果のデータはまだ集まっていませんが、薬が効いた人は2~3シーズンは飲んだ方がいいと思います。実用化のためには大規模な臨床試験を行なう必要があります。また、スギ抗原は合成物ではなく天然のスギ花粉エキスを使っているため、抽出して薬剤にするためには生産コストや安定性の課題があります。今後さらに研究を深めて実用化を進めていきます」
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