全国の水族館では、カメラのフラッシュをどう扱うかについて、各館で対応が分かれている。魚への影響を巡って考え方に違いがあるからだ。ゴールデンウィークに入って、マグロの激突死映像がツイッターなどに投稿され、フラッシュの影響なのかどうかが関心を集めている。
巨大なジンベイザメが泳ぎ去ると、突然1匹のマグロが猛スピードでこちらに向かってきて...。
沖縄美ら海水族館のマグロ動画で物議に
フェイスブックやツイッターでは、2017年4月30日ごろ、沖縄美ら海水族館で撮ったというこんな1分ほどの映像が次々に投稿された。映像では、20人以上の客が集まっている大きな水槽が映し出された。
マグロが透明な壁に激突したのは、フラッシュが数回たかれた後のことだ。激突したマグロは、血を流して底に沈み、「なんか血吐いてる! どうした? どうした?」と誰かが叫ぶ様子で終わっていた。
ゴールデンウィークの中だけに、ネット上では、この映像への関心は高く、客のマナーが悪いと次々に批判が上がっている。
「うわ、ひでえな」
「かわいそうに!」
「フラッシュを焚くってどういう事なのでしょうね」
一方で、名指しされた美ら海水族館では、ホームページ上で「館内はフラッシュを使ってもかまいません」と明記されている。そのことの指摘がネット上であり、「これって、ストロボ関係あんの?」「他の魚は反応してない」などと、激突死の原因をフラッシュにすることに疑問の声も出ている。
映像は、4年前にユーチューブ上に投稿されたものと同じであることも分かった。美ら海水族館でマグロが壁に激突して死亡したとみられる別の映像も、8年前にユーチューブ投稿されているが、4年前の映像がこれと同じときのものかは不明だ。
葛西臨海水族園は、館内でフラッシュ禁止
今回の激突死映像について、美ら海水族館の魚類チームは5月1日、J-CASTニュースの取材に対し、水族館で撮られたものであることを認めた。しかし、ここ数年は、マグロの激突死があったとは聞いておらず、映像が過去のいつのものかも分からないという。
フラッシュの影響については、「私どもの経験則ですと、マグロがおかしくなって突進するというのは考えられません」と否定した。ただ、イルカが妊娠しているなどナイーブな状態のときは、フラッシュを制限することもあるという。また、業務用の強い光については、影響を与える可能性もあるので断っているそうだ。
突進の原因については、はっきりしないものの、ジンベイザメなどほかの魚と接触したり、落雷で停電してポンプが止まったりすると、落ち着かない行動になるとしている。
一方、全国の水族館の中には、マグロへの影響には触れていないものの、フラッシュを禁止しているところもある。
東京都立葛西臨海水族園では、光などの刺激に対して敏感な生き物もいるとして、ホームページ上で「生物保護のため、館内でのフラッシュ撮影およびAF補助光の使用はご遠慮ください」と明記している。
日本動物園水族館協会の事務局長は、フラッシュについては協会として規制しておらず、各館の判断に任せていると取材に答えた。「水族館では、館内を暗くして魚のいるところを明るくしています。魚から見ると周りが暗いので、フラッシュに驚くこともあります。一方で、魚の方でも、光に慣れてくるというところもあると思います」と話している。水族館ごとにルールを確かめる必要があるということのようだ。