消防団員7人が打ち合わせの場所から分団に戻る途中に消防車でうどん店に立ち寄り昼食を取ったとしクレームが入り、市の消防本部が謝罪するという騒ぎがあり、謝罪する必要はないとの議論がネット上で巻き起こった。
実は、救急隊員も働き詰めの場合が多く、いくつかの自治体ではホームページ(HP)で、隊員が食事を病院の売店で買ったり、病院職員の食堂で食べることに理解を示してほしいと市民に理解を求めていることが、消防団の騒ぎでクローズアップされることになった。ネット上では消防団員の時と同じように、「救急隊員に食事を取ってもらうべきだ」という擁護の声が上がっており、クレーマーへの批判も多く出る事になった。
「連続する出動などのため、食事が摂れない場合があります」
船橋市消防局は2016年からHPで、
「救急隊は連続する出動などのため、食事が摂れない場合があります」
とし、
「ご理解をいただいた病院の売店等で飲食物を購入し、飲食を摂ることにしました」
としている。
千葉市消防局も数年前からHPで、
「救急隊員が病院の職員食堂などで食事(飲食)をする姿を見かけることがあると思いますが、緊急の要請に対する出動体制は維持しておりますのでご安心ください」
と掲示している。
札幌市消防局もHP上で
「食事を摂らずに救急活動を行う事を改善するために、通常の食事時間を過ぎた場合について、最寄りのコンビニエンスストアに立ち寄り、飲食物を購入することで対応することと致しました」
などと、救急隊員の食事に理解をしてもらうお願いをしている。
こうしたことは、17年4月16日(日曜)に愛知県一宮市で起きた消防団員が打ち合わせの帰りに、消防車でうどん店に立ち寄ったとクレームが入り市の消防本部が謝罪したというニュースが騒動になったことから、その関連でネット民が掘り起したものだ。
ツイッターや掲示板では、「なぜ市民に了承を取る必要があるのか?」という反応も含めて、
「とにかく、全く問題ありません」
「クレーマーなど気にせず頑張れ救急隊!」
「病院で食事しないといけないほど働かせてすみません、とは思えないものかね?」
「消防団員の件もそうだが、こんな事にクレーム出す奴は自分の家族が倒れたり、家が燃えたりした時、今食事中だから出動は終わるまで待ってって言われたらどう思うんだろうな」
などといったことが掲示板に書き込まれた。
「市民感情に配慮した結果です」
J-CASTニュースが17年5月1日に千葉市消防局に取材したところ、救急隊員が仕事途中にコンビニで食べものを買ったり、食事をしてはいけないという国が決めたガイドラインはないが、そのような行動は自粛し署に戻って食事を取っていた。
1989年(平成元年)の救急車の出動回数が2万件だったのに対し、近年では5万5000件に膨らんだ。しかし、隊員の数はそれほど増えていないのが現状で、現在はGPSで救急車の位置を把握し、事故や病人のいる場所に一番近い車を向かわせるため、場合によっては働き通しの隊員も出てしまう。
「救急の仕事をするうえで、隊員の体調は重要であり、しっかりと管理・調整する必要があります」
と担当者は話し、従業員食堂がある病院にお願いをし、どうしても食事を取らなければならない状況になった際は、食事や休憩に使わせてもらえるように交渉したのだという。HP上に「お願い」を掲載したことについて、担当者は、
「好ましくないとする市民感情に配慮した結果です」
と明かした。市民の中には食事をしている姿を見て不快になったり「さぼっている」と誤解をされる場合があるからだという。
J-CASTニュースは東京消防庁にも話を聞いてみた。実は東京消防庁は2005年5月13日付けで隊員に対し、救急隊員が業務の合間に救急車でコンビニやファーストフード店に立ち寄ることを解禁している。担当者はこう話した。
「食事を取れるようにする苦肉の策ではあったのですが、許可していると言っても単に、『お腹が空いた』とかでは使えない様々な条件付きです」
クレームはないのか、と質問したところ、
「私は特にクレームは受けたことはありませんが、仮に来たとしても、食事することをご理解頂ける体制は取っております」
ということだった。