ほとんどの病気で、「有効」との証拠不足
医療大麻の使用は米国のほかカナダやオランダをはじめ欧米に広がっている。2017年1月には、ドイツで連邦議会が合法化の法案を成立させたと報じられた。国や地域によって医療大麻のスタンスはさまざまだが、少なくとも日本では、たとえ大麻合法とされた場所で入手したものでも、所持により違法になる。
「推進派」は大麻の医学的な効果を主張するが、厚生労働省では全面否定する。この点、医療ジャーナリストの市川衛氏が「Yahoo!個人」2017年1月29日付投稿で論じている。市川氏は、世界保健機関(WHO)が2016年に公開したシステマティックレビューの資料を読んだ。これは「過去40年に渡って世界中で発表された大麻に関する研究を集め、中でも質の高いものを選び出し...それらを複数の研究者が、決められた方法で評価」したものだという。
その結果、大麻が有効とする信頼性の高い証拠が得られたものは、国指定の難病「多発性硬化症」における、けいれんや痛みをやわらげる効果だ。また効果を示した研究はあるものの、有効だと結論づけるまでには至らないものは、「神経の異常を原因とする慢性的な痛み」をやわらげる効果だった。それ以外の病気については、現段階では「有効だとするには証拠が足りないとされているようです」と結論づけた。今後の研究で変わる可能性はあるが、今のところ国際機関が公的に認めた有効性はごく限定的なようだ。
高樹被告が語った大麻の使用理由は、更年期障害と、親知らずの抜歯の後の痛みをやわらげるためだった。治療のために医療機関を受診するという考えには至らなかったのだろうか。