大統領の能力への不安も
しかし、今すぐに軍事行動に出ることについては、慎重な意見が強い。
CBSニュースの世論調査(2017年4月21日~24日実施)では、「北朝鮮の兵器開発は、米国にとって直ちに軍事力行使が必要な脅威である」と答えた人は、27%に過ぎなかった。また、北朝鮮の核開発の状況に対処するトランプ大統領の能力に不安を感じていると答えた人は、全体の62%、民主党支持者の間では91%と非常に高い。
反トランプ派のアンさん(60代)は、同大統領は北朝鮮を挑発していると憤慨する。
「これまでにトランプは、ほとんど何も成し遂げていない。批判をかわし、税金問題などから国民の関心をそらせ、メディアを味方に付けるために、北朝鮮を利用しているだけ。紛争になったら、弾劾も免れやすい。トランプも金正恩(キムジョンウン)と同じくらい、理性のない人間。今、米朝で紛争が起き、韓国や日本に莫大な被害が出ても、トランプにとっては対岸の火事にすぎないのよ」
世論調査後、北朝鮮は弾道ミサイルを発射。トランプ大統領は北朝鮮への強硬姿勢を一層強め、金氏を公然と非難。大きな紛争が起きる可能性も示唆している。互いに挑発し合い、緊張が高まるなか、29日には米原子力空母カール・ビンソンが朝鮮半島の海域に到着し、韓国軍との共同訓練も始まった。
朝鮮半島の動きを、世界が固唾を呑んで見守っている。私は4月下旬から、日本に一時帰国中だが、たった今も、アメリカ人の友人からメールが届いた。
I've been thinking of you several times a day, worried about the political situation. 一日に何度も、あなたのことを考えています。政治情勢を懸念して。
(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社
のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓
を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1
弾から累計35万部を超え、2016年12月にシリーズ第7弾となる「ニューヨークの魔法
の約束」を出版した。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育
事情」(ともに岩波新書)などがある。