フェティシズム批判が起こる2つの理由
米国のニュースサイト「broadly vice.com」(2016年7月7日付)は、大きな乳房のイラストを背景に「これを吸う? 大人の母乳育児関係とそれを愛する人々」という記事を掲載した。記事の内容は、批判する意見と当事者の声、そして専門家の指摘を、次のようにバランスよく紹介している(要約抜粋)。
「ANRには多くのオンラインコミュニティーがありますが、人々は彼らを『グロテスク』『異常』『偏愛』と批判しています。彼らが母乳を分泌させるために行なっている方法に低電圧の電流を1日に4回、約20分ずつ胸に流すというものがあります。その時にあげる叫び声は、批判者が『フェティシズム(性的倒錯)』というように、決してセクシーとは言えません。なぜ、彼らはこんなことをするのでしょうか。彼らの声を聞きましょう」
「50代の女性ケイトは、こう言います。『夫との関係は、母乳育児に入ってから強くなりました。セックスのためと思う人がいますが、違います。母乳を与える時は相手の性別は全く頭に入りません。昔、娘を母乳で育てた時と同じ。私たちはテレビの前で授乳します。母乳を与えること、それを飲むことは、体ではなく心の領域だけで、愛し、愛される関係になります。実際、夫が授乳中の時は、私たちが最も平等な時です。私たちは2人とも養いの気持ちを共有することができます』」
記事では、セックスカウンセラーのトーニャ・ミラーさんのコメントで締めくくっている。ミラーさんは編集部の「フェティシズムという批判があるが」という問いかけに、断定せずにこう答えた。
「ANRには、フェティシズムの批判の嵐が完璧に起こる理由があります。私たちを非常に不快にさせる2つのタブーが組み合わさった行為だからです。1つは母乳を飲む行為によって、大人の男性が女性に依存しているように見えること。男性は女性より強くあらねばという社会の考えに反しています。2つ目は、女性の最も神聖な場所と行為と思われている乳房と授乳を、女性側のアイデアによって、性に使っているように見られることです」