「脂肪」は脳細胞を自殺させ、食欲のブレーキを壊す
「脂肪の味」の恐ろしさについて、味覚と脳の研究をしている琉球大学の益崎裕章教授はこう解説した。
「マウスに動物性脂肪を食べさせる実験をすると、どんどん食べ続けてやめられなくなります。太るばかりか脳に異変が起こり、もっと食べたい、もっと食べたいとなるのです。脳神経を調べると、細胞が黒く変色し死んでいます。細胞が自殺するのです。この現象は、特に視床下部という食欲をコントロールするところで起こります。ここは、『もっと食べたい』という食欲のアクセルと、『満腹だからもう十分』というブレーキの両方が働く場所ですが、細胞の自殺でブレーキがダメージを受け、脳がいくら食べても満足できない状態に陥ってしまいます」
益崎教授は、沖縄県の深刻な健康問題を解決しようと「高脂肪」の研究を始めた。1995年頃まで日本一の長寿県だった沖縄だが、男性の肥満率が2010年代から断トツの1位を続けている。沖縄古来の健康な魚食文化がすたれ、米軍の「肉食文化」が浸透したためだ。
ゲストでポッチャリ系のお笑い芸人・バービーが言った。
「私もお肉大好きだから、自分のことを言われているようで怖いです。確かに焼肉を食べると、『おいしい!』じゃなくて、『気持ちいい~!』と言っちゃいます。もう中毒なのかしら」
伊藤教授がこう解説した。
「栄養素というと、脂肪、炭水化物、タンパク質...と同等に考えがちですが、脂肪だけは特別で、私たち専門家にとっても得体の知れない存在です。体にためこむとエネルギー価が高く役に立つのですが、処理し切れないと腸にたまり炎症を起こします。腸は神経が張り巡らされて『第2の脳』と呼ばれるくらいです。たくさんの神経が脳につながっていますから、腸の炎症が脳に伝わり、ブレーキが利くところが利かなくなる。昔から『脂っこいものは中毒になる』と言われるのは本当なのです」
しかし、この危険な「脂肪の味」も、別の「ある味」を食べると中毒が改善するばかりかダイエットにもなるという。「おいしく食べると体中が喜んで活性化する」と番組の冒頭で紹介したのは、その「味」のことだ。「赤ちゃんが大好きな味」という「ある味」とは何か。後編に続く。