「がんは死に至る病から、糖尿病と同じ慢性疾患に」
――進行性のがんでは、ほとんどが助からなかったのに、亡くならない患者が出てきたということですか。
「そのとおりです。『がんはもはや死に至る病ではなく、糖尿病や高血圧などと同じく、慢性疾患となりつつある』ということを強調したいと思います」
――非常にうれしいことですが、まだ効く人が2~3割だけなのですね。効く人と効かない人の差はどこにあるのでしょうか。
「それを突きとめるためには腸内細菌の分析が必要で、今回のプロジェクトの最大の目標です。免疫療法を行なった患者さんのがん細胞を詳しく調べると、がん細胞の周りをT細胞が取り囲んでいます。T細胞は決してサボっているわけではなく、がん細胞がブレーキをかけているため攻撃できずに待機しているのです。いわば、がん細胞がダムを作り、T細胞の流れをくい止めている構図です。免疫チェックポイント阻害薬はダムを破壊し、T細胞の流れを一気にがん細胞に向かわせる役割です。そして、ダムにたまるT細胞の量が多い人ほどがん細胞が小さくなり、たまる量が不十分だと効果が上がらないことがわかりました」