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日本人のがん治療の成績が良いのは腸内細菌のおかげ

――腸内細菌の違いが大きいのですね。

「抗がん剤の臨床試験では、『日本人の成績は良く、治療効果が高い』といわれています。たとえば、すい臓がんに使うジェムザールという薬では、日本人は欧米人などほかの国の人より平均約2か月長く生きます。肺がんの薬でも生存率が高いのです。これは、日本人の食育のレベルが高く、いい食生活をしているから腸内細菌の種類が多く、腸内環境の状態がよい可能性が高いからとも考えられます」

――腸内細菌の種類が多いほどがんの免疫療法が効く可能性が高いということですか。ところで、がんの免疫療法とは何でしょうか。

「人間の体には、がん細胞を攻撃し殺傷する免疫細胞がたくさんいます。しかし、がん細胞も自衛し免疫細胞を働かなくしていることがわかってきました。免疫細胞は体のあちこちでがん細胞やウイルス、細菌など外敵と戦うため、戦場のような状態になり、私たちの体は炎症を起こします。だから、免疫細胞は戦いが終わった後は過剰防衛にならないようブレーキが働き、鎮静化します」

――激しい戦いが体の中で行なわれているのですね。

「中でも特に強力で、スナイパーと呼ばれるT細胞は、働きすぎると火災現場のように他の組織を傷つけます。そこで、T細胞にはあらかじめブレーキ役の分子「PD-1」(Programmed cell death-1)が備わっています。がん細胞は免疫の攻撃から身を守るためこのPD-1を悪用します。自分の分子(PD-L1)とT細胞のPD-1を結合させると、T細胞は攻撃をやめてしまいます。ちょうどT細胞のカギ(PD-1)が、がん細胞のカギ穴(PD-L1)にガッチリはまり、身動きできなくなった状態を想像するとわかるでしょう」
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