東北弁・東北なまりでお困りの際は、ご連絡ください――。「東北弁に強い」ことをウリにするテープ起こし業者「東北議事録センター」(宮城県仙台市)が、いまインターネット上で注目を集めている。
注目のきっかけは、今村雅弘・前復興相の「問題発言」を受けてツイッター上で起きた「♯東北でよかった」運動にある。このハッシュタグを用いて「東北弁の魅力」を発信したユーザーの一人が、東北弁に特化した同社の業務内容を好意的に紹介したのだ。
「笑ったあとで、ハッシュタグ見たら...」
「♯東北でよかった」のタグを用いて「東北議事録センター」を紹介するツイートが投稿されたのは、2017年4月26日のことだ。
東北出身だという投稿者は、「東北弁を人類の稀有な言語学として無形文化遺産にするべき」などと冗談のようなコメントを添えつつ、同社が使っている広告の画像をアップロードした。その広告とは、
「東北弁・東北なまりのテープ起こし、お任せください」
というキャッチコピーが大書されたもので、「法廷提出用の証拠録音で、東北弁・東北なまりでお困りの際は、ご連絡ください」とも呼び掛けている。
この投稿は東北出身とみられるユーザーを中心に注目を集め、ツイートのリプライ(返信)欄には、
「ちょっと笑えた。確かにわが町の議事録読んだ時にはオドロイた。関東出身者では聴き取れんだろう」
「笑ったあとで、ハッシュタグ見たら、泣けた」
といった反応が出た。そのほか、自身の経験と絡めて「震災の時、他県から来てくださったボランティアさんと地元の人達の通訳してました」と呟くユーザーも出ていた。
では一体、「東北弁に強い」ことをウリにするテープ起こし業者では、どんな仕事を請け負っているのだろうか。J-CASTニュースは4月27日、同社代表の花角潤一氏に詳しい話を聞いた。
被災者の「生の声」を伝える仕事も
花角氏によれば、同社で現在請け負っている仕事の8割近くは、東北各県の地方自治体から受注する議事録作成などの依頼。高齢の議員や首長が多い地方議会の場では、方言やなまりが飛び交うことはザラだという。
もともとは地元を中心に仕事を受注していたため、特に「東北弁に強い」ことを意識することはなかったというが、かつて東京の弁護士事務所から、
「東北の方言がきついテープ起こしがあるのだが、都内のどの業者に頼んでも断られた。何とかできないか」
との依頼があったことで、自社の強みを改めて認識したという。実際、同社で文字起こしを担当するスタッフは50人ほどだが、仙台という土地柄もあって東北全県の出身者が揃っているそうだ。
また、2011年の東日本大震災発生後は、アーカイブ作成のため被災した地元住民へのインタビューの文字起こしを研究機関などから依頼されることも増えたという。こうした受注について、花角氏は、
「被災地域には高齢化が進んでいるところもあり、同じ出身地のスタッフでも、年齢が若いと相手が何を話しているのか分からない場合もあります。ですので、こうした案件には50代以上のベテランを当てるなど、こちらも工夫しています」
と話した。
なお、同社では2015年から、日本弁護士連合会が発行する専門誌『自由と正義』へ定期的に広告を掲載している。花角氏によれば、今回ツイッターで話題を呼んだ広告も同誌に掲載したものだという。
今回は、東北地方の魅力を再発信する「♯東北でよかった」というハッシュタグ付きで、東北弁と同社の業務が「東北地方の魅力」として紹介された。こうした動きについて、花角氏は取材の終わりに、
「東北弁は、喋っていると笑われるみたいな風潮があるじゃないですか。地元の人でも、公の場ではあまり使わないですし。だからこそ、こういう反応が出ているのは嬉しいですし、東北の方言が今後も残っていってくれればいいなと、そう思います」
と話していた。