被災者の「生の声」を伝える仕事も
花角氏によれば、同社で現在請け負っている仕事の8割近くは、東北各県の地方自治体から受注する議事録作成などの依頼。高齢の議員や首長が多い地方議会の場では、方言やなまりが飛び交うことはザラだという。
もともとは地元を中心に仕事を受注していたため、特に「東北弁に強い」ことを意識することはなかったというが、かつて東京の弁護士事務所から、
「東北の方言がきついテープ起こしがあるのだが、都内のどの業者に頼んでも断られた。何とかできないか」
との依頼があったことで、自社の強みを改めて認識したという。実際、同社で文字起こしを担当するスタッフは50人ほどだが、仙台という土地柄もあって東北全県の出身者が揃っているそうだ。
また、2011年の東日本大震災発生後は、アーカイブ作成のため被災した地元住民へのインタビューの文字起こしを研究機関などから依頼されることも増えたという。こうした受注について、花角氏は、
「被災地域には高齢化が進んでいるところもあり、同じ出身地のスタッフでも、年齢が若いと相手が何を話しているのか分からない場合もあります。ですので、こうした案件には50代以上のベテランを当てるなど、こちらも工夫しています」
と話した。
なお、同社では2015年から、日本弁護士連合会が発行する専門誌『自由と正義』へ定期的に広告を掲載している。花角氏によれば、今回ツイッターで話題を呼んだ広告も同誌に掲載したものだという。
今回は、東北地方の魅力を再発信する「♯東北でよかった」というハッシュタグ付きで、東北弁と同社の業務が「東北地方の魅力」として紹介された。こうした動きについて、花角氏は取材の終わりに、
「東北弁は、喋っていると笑われるみたいな風潮があるじゃないですか。地元の人でも、公の場ではあまり使わないですし。だからこそ、こういう反応が出ているのは嬉しいですし、東北の方言が今後も残っていってくれればいいなと、そう思います」
と話していた。