自民党の二階俊博・幹事長(78)が、「1行悪いところがあると『首を取れ』と言う」と、メディア批判を展開した。復興相だった今村雅弘氏(70)辞任のきっかけとなった、東日本大震災をめぐる「東北でよかった」発言の報じ方を受けての感想を述べたものだ。
二階氏発言を報じるテレビのニュース番組の取り上げ方は様々で、論評なしで発言を伝える番組がある一方、キャスターが反論する局もあった。中には発言自体を扱わない番組も。
星浩氏「問題の深刻さを理解していない」
二階氏は2017年4月26日、東京都内で講演を行い、今村氏の失言をめぐる報道の態様を厳しく批判した。
「政治家の話をマスコミが余すことなく全部記録して、その中で1行悪いところがあると『これはけしからん』『すぐに首を取れ』と。なんちゅうことですか。そんな人は、はじめから排除して入れないようにしなければ駄目だ。人様の講演会に来て、じーっと聞いて、1つでも悪いことがあればそれを持って首を取る」
これに先立つ25日、今村氏は東日本大震災の被害について「社会資本などの毀損も、いろんな勘定の仕方がある。25兆円という数字もある。これはまだ東北で、あっちの方だったからよかった。これがもっと首都圏に近かったりすると...」と発言。「東北でよかった」との言葉は、被災地への配慮を欠いているとして各メディアが批判的に報じ、今村氏は26日に復興相を辞任した。
26日夜の民放キー局の報道番組を見ると、二階氏のメディア批判に対し、「NEWS23」(TBS系)では星浩キャスター(61)が「二階幹事長は問題の深刻さを理解していないのではないか、という気がする」としたうえで、
「僕らマスコミ、メディアは視聴者や読者の目線で事実を伝えて、それを分かってもらおうとしている。その報道を今回国民の皆さんが見て、本気で怒っている。その怒りを二階さんも気づくべきだと思う」
と反論した。
一方、「報道ステーション」(テレビ朝日系)では、二階氏のメディア批判発言を講演の映像を使って報じたが、キャスターを含め、スタジオでは発言に対する反論コメントはなかった。「ユアタイム」(フジテレビ系)は、二階氏の発言を同様に映像で報道し、スタジオに識者を招いて取り上げたが、キャスターが直接主張する場面はなかった。「NEWS ZERO」(日本テレビ系)では二階氏の発言自体が報じられなかった。
小倉智昭「噛みつかせていただきたい」
翌27日朝放送の情報番組「とくダネ!」(フジテレビ系)では、小倉智昭キャスターが語気を強めた。「1行だけの悪いところを見つけて『首を取れ』と言うマスコミはけしからんと二階さんは仰っていたが、まあそれも1行か2行のことだが、噛みつかせていただきたい」と切り出した。
「最近はそうでなくてもメディアは昔に比べて物を言いづらくなったと言われる。その中でこういう二階さんの発言があるとこれは納得できないというメディアが多いと思う」 「たった1行でも絶対に言ってはいけない言葉があるんじゃないか。『震災が東北でよかった』なんて誰が言いますか、そんなこと」
さらに小倉氏は「政治家でも、国会を見ていると、何か一言について『不信任だ!』とか結構やってるけどね」と皮肉交じりに述べている。
一方、二階氏は26日の講演の中で「マスコミに罪をなすりつけるような卑怯な真似はしてはいけないと思うが、多少の思い上がりだろう。気楽な気持ちでいるとあのようなことになる。間違ったことを言う人の資質の問題だ」と、今村氏への批判とも取れる言葉も発していたが、小倉氏は「二階さんは『言いすぎちゃったかな』と思ってこう仰ったのかなと思う。真意は分からないが」といぶかしんだ。
今村氏は二階派に所属しており、「東北でよかった」発言も二階派のパーティーの講演中に出たものだった。「とくダネ!」にスタジオ出演していたジャーナリスト・山口敬之氏(50)は「辞任した今村氏を多少擁護するのは良いボスだと思う。ただその論理が先に来て、被災者の方を向いていないという理由で辞めた今村さんを擁護すると、二階さんも同罪ということになる」と述べていた。