まだ、朝日新聞は森友学園問題を報じている。2017年4月26日配信記事のタイトル「財務省、森友との契約『特例』 面会時、籠池氏が録音」から察せられるが、財務省の「配慮」の原因には、まだたどり着けていない。今回のコラムでは、森友学園問題に対する報道から透けて見えるマスコミ体質を書こう。
森友学園問題とは何だったのだろうか。事の発端は、2月11日付の朝日新聞である。同紙は、その後、国有地の大幅値引きを、安倍昭恵夫人の関与によるモノとして報道している。後に、このストーリーで国会などでも盛り上がったが、具体的な関与の証拠は出てこなかった。3月23日に行われた森友学園の籠池氏の国会証人喚問後、急速に話題がなくなった。
この事件を「異常なほど」取り上げたマスコミ
マスコミは異常なほどこの事件を取り上げたが、真相解明になるような報道は皆無だった。筆者は元財務官僚ということもあり、様々な取材を受け、事件の真相を述べた。しかし、ほとんどの場合、それでは面白くないと言外に示唆され、取材結果が報道されることはなかった。そこで、筆者の思っていたことをネット上(現代ビジネス)で4月3日に公開した。
それは、多くのマスコミの人も同意してくれたが、骨子は次の通りだ。まず、森友学園と隣接する一筆の土地は2010年に豊中市に売却されたが、その当時大阪航空局より地中にゴミがあるという報告がなされ、豊中市も確認している。近畿財務局はその事実を言わずに2013年から森友学園と交渉している。その後、森友学園が地中のゴミに気づき近畿財務局が値下げに応じた経緯がある。これらは、3月1日に出された鴻池メモなど、マスコミが既に持っている資料から、明らかである。
それにもかかわらず、冒頭で紹介した昨26日のニュースをまだ報じている。その日のテレビ朝日「モーニングショー」でも、まだ実態解明が出来ていないなどと、訳知り顔のコメントもあった。
近畿財務局のチョンボ
さすがに、ここまでくると、マスコミの存在意義を疑ってしまう。マスコミの中には心ある人もいる。そうした人の中には、よくぞ言ってくれたと筆者のところに連絡してくれる人もいる。そういう人たちに自分のところの媒体で書けばいいじゃないかと言ったこともあるが、それができないという。その理由は筆者にはわからないが、筆者の見立ては近畿財務局担当者が地中ゴミの事実を隠して随意契約したという「近畿財務局のチョンボ」であるので、単純すぎて昭恵夫人の関与がないからニュースにならない、ということらしい。
せめて、多様な意見を紹介するという観点から、筆者の見立てのように、国有地の大幅値引きに昭恵夫人の関与ありと決め打ちしないこともマスコミは報道した方が良かっただろう。
マスコミは決め打ちが多く、報道機関とは呼べないレベルの時も珍しくない。しかも、その決め打ちが外れたとき、フェイクニュースと言われてしまう。
一方、ネット上の言論はほとんどがフェイクであるといわれる。確かにそうだろう。しかし、ごく一部であるが真実もある。要するにうまく情報を探し出せればネットの方が使える。
先日、ネット上で、ある大学教授が安倍政権を倒すためには経済を潰せばいいという発言をして問題になった。今回の森友学園問題におけるマスコミの決め打ちも、それと同じような発想という気がする。そして決め打ちなのでフェイクの場合のダメージが大きい。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「これが世界と日本経済の真実だ」(悟空出版)など。