フリーアナウンサーの夏目三久さんが、2017年4月22日放送の「サワコの朝」(TBS系)で語った「人の目が気になってひとりで外食ができないというのは、自意識過剰」という持論が議論を巻き起こしている。
司会の阿川佐和子さんも「寂しくないの?」と驚いていたが、「ひとり外食」の意識は変わってきているのだろうか。
「誰も見ていませんよ」
トークのきっかけは、夏目さんの「ひとりで外食しますよ」という発言だった。近所の定食屋にも行くし、焼肉屋にもひとりで行くという。
阿川さんは目を丸くするが、夏目さんは笑いながら「いけないですか?」と涼しい顔。阿川さんが「私は小心者なので。ひとりって緊張するんですよね」と返すと、「それは自意識過剰でしょう」「誰も見ていませんよ」と、答えた。
阿川さんは「見られていると思うよ?」と食い下がったが、「でも、それを気にしちゃうと何もできなくなるので」と、最後までクールに答えていた。
この一連の流れにネットでは、
「これだね 案外他の人なんてみてないし何も思わない」
「1人で何もできないのはみっともない」
「これは夏目の言ってることの方が共感するな」
「ひとりの自分が恥ずかしいと思う人は、ひとりの人をみてバカにしてるのかな?」
と、共感の声が多くあがっている。
一方で、
「(夏目さんは)気の強い男みたいな人」
「夏目は気にしなさすぎだから。ひとり外食自体はいいけどもう少しは気にする女の意見の体にしてくれ」
といった、夏目さんだからできること、という意見も少なくない。
このような「やっぱり自分にはできない」という意見はアンケートデータにも表れている。たとえば、アイブリッジが2015年11月に発表した「ひとりごはん(外食)に関する調査」によると、「ひとりごはん(外食)に抵抗がある・少し抵抗がる」と答えた男性は34.7%、女性は59.0%いた。
世の中的に見れば、4~6割の人がまだ「ひとり外食」に抵抗がある、ということだ。
できないという人の意見は、「他の客の視線が気になる。お店に入った瞬間、他の客に見られるのが嫌」「周りに一人ぼっちと思われると悲しい」というものが多い。
Yahoo!知恵袋にも、「一人で外食に行く時に、目のやり場や立ち振る舞いにとまどいます」というトピックスがあがっている。相談者は、ひとりでいる=寂しい人と思われているんじゃなないか、と気になり落ち着きがなくなるという。ひとりの時間の方が好きだが他人には見られたくない場合どうすればいいか、という内容だ。
こういった、ひとりがいいけど人目が気になるという意識の「正体」は何なのか? また、へっちゃらな人と絶対無理という人の差はどこにあるのか。心理学者の杉山崇氏に話を聞いた。
自意識過剰とはつまるところ劣等感
「もともと日本人は村社会で生きてきました。コミュニティーの一部になっていないと『マズい』という認識が長らく続いたのです。食事は人とするもの、だから1人で食べていると『食事をする仲間もいないのか?』と、こういう思考になってしまうのです」
最近は、まわりの目を気にしても仕方ないという人が増え、「自分らしく」「おひとりさまの楽しみ方」が市民権を得ているが、感受性が強い人は、なかなかそうもいかない。
「人間は仲間がいると気が大きくなります。まわりに集団が何組かいて、自分だけ1人だと、まるで自分が小さくなった気になってしまうんです。それが居心地が悪いとか、恥ずかしいといった気持ちにつながります。夏目さんが言うところの『自意識過剰』というのは、この居心地の悪さや劣等感に当たると思います」
人目が気になる、気にならないの差は持って生まれた感受性だそうで、「人のことはあまり気にならない」という人は、ひとり外食に抵抗がない人が多い。反対に見知らぬ人に対して、相手がどう思っているかと心配になってしまう人は、ひとり外食は苦手な傾向にある。
ただ、杉山氏によれば「克服」する手はあるという。
「苦手な人はずっと苦手です。ただ、慣れで改善はします。ひとりでの外食を繰り返していると、最初は挑戦かもしれませんが、徐々に『ああ、こんなものか』と、環境に慣れてくると思います」