ローソンの玉塚元一会長(54)が2017年5月末の株主総会で退任する。サントリーホールディングスに転じた新浪剛史氏(58)の後継として経営を任されたが、親会社である三菱商事の支配が強まり、自ら退任を申し出たという。居場所がなくなっていたというわけだ。玉塚氏が去った後のローソンの戦略に注目が集まる。
「2頭体制は良くない」。玉塚会長は4月12日の記者会見で、退任理由を語った。もう1頭は三菱商事出身の竹増貞信社長(47)。2週間ほど前には「玉塚会長、竹増社長」という株主総会以降の人事案を発表していただけに、突然の退任といえ、週刊誌では様々な憶測記事も出ている。
「非資源部門」の拡大が三菱商事の至上命題
だが最近の業界動向を考えると、退任にそれほど驚きはないというのが業界関係者の多くの声だ。最も大きな変化は、2016年9月の「ユニー・ファミリーマートホールディングス」の発足。業界3位のファミリーマートがユニー傘下で4位のサークルKサンクスを取り込み、1万8000店舗で業界2位に躍り出た。1万9000店舗を持つ首位のセブン-イレブンに迫っている。それまで1万2000店舗で2位だったローソンは、従来通り3強の地位にとどまるのか、それとも脱落してセブン、ファミマの2強時代が到来するのか、分岐点に立たされているというのが大きな業界の構図だ。
ローソンにとっても、筆頭株主の三菱商事にとっても、脱落は許されない。三菱商事の垣内威彦社長(61)は生活産業グループ出身で、長年、ローソンの社外取締役を務めていた。市況によって収益が左右されにくい「非資源部門」の拡大が三菱商事の至上命題であり、ローソンの成長はその中核。ローソン株の公開買い付けを実施し、2017年2月、保有割合を3割強から5割強へと高めたのも、決意の表れといえる。
玉塚氏は「プロ経営者」の代表格。慶大法学部を卒業後、旭硝子、日本IBMを経てファーストリテイリングに入社。柳井正社長(68)に見込まれ、40歳の若さで同社社長を任された経歴を持つ。経営目標を達成できず、3年足らずで事実上者解任されるなど、良くも悪くも「目立つ」存在だ。三菱商事グループの組織力には到底なじまない。玉塚氏自身が「(ローソンが)三菱商事の子会社になったことが、ひとつのきっかけ」と明言したように、自ら退任を申し出たのもうなずける。
1店舗あたり平均日版、セブンとの開きは...
現場を精力的に歩き回る玉塚氏は、加盟店からの信頼も厚かったとされる。だが、業界首位のセブンとの差は、なかなか埋まらなかったのも事実だ。ローソンの1店舗あたりの平均日販は54万円と、セブンとは10万円以上の開きがある。商品力、店舗戦略、出店戦略など、どれをとっても、たたき上げの小売りのプロ集団であるセブンが一枚上手だ。
巻き返しには、三菱商事グループとしての組織力を最大限生かすことが不可欠。例えば、ローソンは山崎製パン、キユーピーなど、専用工場を持つ各社に自ら設備投資を実施し、製造部門に積極的に関与して商品開発に生かす戦略を鮮明にしている。そこでは、三菱商事の資金や人材面での関与がカギを握る。
2021年度に平均日販60万円、店舗数1万8000店舗――掲げた目標をいかに実現するのか。エリート集団、三菱商事の真価が問われることになる。