「うちの子を返して下さい」――。2017年1月末で廃業した大阪府枚方市のペット霊園「宝塔(ほうとう)」に、利用者への告知が不十分なまま墓地の解体・撤去作業を進めたのではないかという疑惑が浮上した。
現地を訪れた複数の人物の報告によれば、霊園の敷地内には現在、地面から掘り返されたとみられるペットの遺骨や墓石が無造作に山積みされているという。こうした現状について、霊園の利用者は「あまりの無残な状態に涙が出ました」と悲痛な思いを漏らしている。
「残りはいらないものとして対応します」
問題となったペット霊園「宝塔」の公式ホームページは、4月21日現在も営業時のままの状態で残っている。サイト上には霊園が廃業した旨は一切告知されておらず、今もペットの遺体引き取りを受け付けているような記述もある。
だが、この霊園はすでに撤去工事が進み、すでに更地に近い状況となっている。敷地の入り口には、
「平成29年1月末日をもって当園は閉園しました。順次、取壊・解体・撤去・整地の後、地権者へお返しします。ご愛顧ありがとうございました」
との看板が立てられている。さらに入り口には、この「閉園のお知らせ」の後に立てられたとみられる別の看板もあり、そこには、
「4月より工事に入ります。このお彼岸が最後のお参りとなります。写真など思い出の品をお持ち帰りください。残りはいらないものとして対応しますのでよろしくお願いします」
と書かれている。実際、J-CASTニュース記者が21日、サイト上に掲載された番号に電話をかけてみたが、「おかけになった電話番号は現在使われておりません」という機械音声が流れるだけだった。
開園から20年以上経つというこの「宝塔」には、これまでに多数のペットの亡骸がおさめられてきた。にも関わらず、閉園にあたって複数の利用者がネット上に寄せた報告によれば、
「連絡は敷地の入り口に出された貼り紙だけで、そのほかには何の連絡もない」
というのだ。
「言葉が出ませんでした」
実際、ペット霊園の情報サイト内にある「宝塔」の口コミページには17年3月頃から、突然の閉園を知って戸惑う利用者からの声が見られる。その中には、
「本日、愛猫の命日のために来園しました。閉園されており 撤去のため中に入れなくなっていました」
「突然の閉園を知り愕然いたしました。家族の一員である大切な我が子のお墓まいりも出来ず、納得がいきません」
「閉園し取り壊されることがわかっていれば納骨しませんでした。20年ずっと大切に人生をともにした愛犬の可哀想な最後に途方に暮れています」
といった悲痛な意見もあった。なかには、閉園の知らせを受けて実際に霊園を訪れたことを報告するユーザーもおり、
「(敷地内には)少し離れた所に色々な物を燃やしたと思われる山、その横に沢山の骨の山 がありました。多分ですが塔の中に入っていた子達ではないかと思います。他の霊園などに頼んで埋葬してくれるとかの配慮はなかったのでしょうか...」
といった生々しい現地の状況を報告。その上で、「あまりの無残な状態に涙が出ました。我が家の子はどうなったのでしょうか...」との悲痛な思いをつづっている。
実際、現地の様子はどうなっているのか。17年4月21日午後に現地を訪れた枚方市のウェブメディア「枚方つーしん」の記者は同日のJ-CASTニュースの取材に対し、
「敷地の中には墓石が転がっていた他、ペットの遺骨とみられるものが山積みになっていた場所もありました。工事はほとんど終わっているようで、一部を除きほぼ更地になっていました」
と話す。現地を歩いた感想については、「単純にひどいと感じ、言葉が出ませんでした」としていた。
枚方市「対応は難しい」
「枚方つーしん」の記者によれば、敷地内には「遺骨や遺品の一部をまとめた段ボール」もあったという。近くには霊園を訪れたという利用者が立てたとみられる看板があり、そこには、
「あまりにも可哀想だったので(遺骨を)袋に入れ、奥の木に置きました。途中までしかできませんでした、すみません」
とのメッセージが残されていたという。また、宝塔の対応について、
「自然葬の子はどこへ行ったのか教えてください。この状況は酷すぎると思います」
と怒りを滲ませた看板もあったという。
このような宝塔の閉園時の対応について、枚方市保健衛生課の担当者は取材に対し、
「ペット霊園の開設に市への届け出は必要ありません。そのため、こちらが運営状況などを把握しているわけではありません。ですので、何か対応を取るというのは難しいのが現状です」
と話している。