明暗くっきり小売業界 「脱デフレはイリュージョン」がキーワード

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   小売業界の株価の動向で明暗が分かれている。「お値段以上」の宣伝文句とともに節約の代名詞ともなったニトリホールディングス(HD)が上場来高値を更新。低価格が持ち味の衣料品店チェーン「ファッションセンターしまむら」を運営するしまむら、医薬品や日用品の販売で訪日外国人から根強い人気を誇るマツモトキヨシホールディングス(HD)なども堅調だ。

   一方、高級感が売り物の百貨店は今後の成長の姿が描けていないことなどから安値圏にある。イオンの岡田元也社長が記者会見で「脱デフレはイリュージョン」を語ったことが、小売業界の雰囲気を象徴している。

  • 小売業界の株価に明暗がついた(画像はイメージ)
    小売業界の株価に明暗がついた(画像はイメージ)
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ニトリ、純利益が過去最高

   家具や寝具、日用品などを取り扱うニトリの業績が好調だ。2017年3月28日に発表した17年2月期連結決算によると、純利益は前期比27.7%増の599億円に達し、過去最高を更新した。ニトリは100万円単位で決算を公表しており、純利益は599億9900万円とギリギリ600億円に届かない、何とも珍しい数字だった。それはともかく、売上高は12.0%増の5129億円で、増収増益だった。

   全体として低価格商品の販売が好調で、既存店売上高は5.5%増を記録した。新規出店を含む全店ではなく、既存店で5%超の売り上げ増というのが、今のニトリの実力を示す。保温力を高めた寝具「Nウォーム」などの機能性商品がヒットしたことも好業績に寄与した。2018年2月期の連結純利益の業績予想については、前期比14.2%増の685億円と発表。売上高は10.7%増の5680億円、経常利益は14.2%増の1000億円を見込む。

   好業績を株式市場は素直に歓迎。連日上場来高値を更新し、4月10日の取引時間中には1万5380円と決算が発表された3月28日の終値に比べ、16%高い水準だ。ニトリは3月15日に東武百貨店池袋本店内で開店したように、都心部への出店に積極的で、新しい顧客層の開拓を進めていることも好感されている。

冴えない百貨店株

   しまむらも4月4日、1万5810円をつけて年初来高値を更新した。その前日3日に発表した2017年2月期連結決算では、純利益が前期比32.8%増の328億円と、4期ぶりに過去最高を更新した。売上高は3.6%増の5654億円。2018年2月期についても、純利益は17.2%増の385億円と2年連続の過去最高更新を見込む。仕入れコスト削減の一方、過剰な値引きを抑えた効果が出るとみられており、安売り一辺倒ではない。やや気がかりなのは2017年2月期の既存店売上高の伸び率が前期比1.1%増と2016年2月期(4.7%増)から減速したことで、今後の動向に注目が集まる。マツモトキヨシHDの4月中旬の株価も、直近の底値である2月17日の5110円からは1割程度高い水準に持ち直しつつある。

   一方、冴えないのは百貨店株だ。大丸、松坂屋を運営するJ・フロントリテイリングは、直近高値(3月21日の1798円)から下落を続けており、4月13日には年初来安値となる1494円をつけた。4月10日に発表した2017年2月期連結決算は、純利益が前期比2.4%増の269億円だったが、売上高は4.7%減の1兆1085億円、経常利益が7.3%減の444億円と低調で、株式市場は売りで反応した。2018年2月期の業績予想で純利益が2.3%減としたことも、売りを加速させたようだ。17年4月20日には松坂屋銀座店跡地を再開発した商業施設「GINZA SIX」が開業。初期費用がかさむとはいえ、百貨店業界の未来を占う事業への期待感が後退したようだ。

   業績悪化でトップが交代した三越伊勢丹ホールディングスの株価も低空飛行が続く。4月6日には1169円と年初来安値をつけた。業績が浮上する兆しも見えず、反転のきっかけをつかめないままだ。

   こうした中、日本を代表する一大流通グループとなったイオンの岡田元也社長は4月12日、2017年2月期連結決算を発表した記者会見で、「脱デフレは大いなるイリュージョン」と指摘した。イオンは4月、傘下のスーパーで日用品などの値下げを実施しており、賃金が伸び悩む消費者の節約志向に寄り添う方針。イオンに追随する形で小売業界が全体としてデフレを前提にした競争に突き進む可能性も指摘されている。

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