ココア、コーヒー、抹茶――。午後のおやつタイムのカフェメニューに見えるが、実はすべて薬の味だ。2017年3月31日に兵庫県が発表した、県内の薬剤師や薬局を対象に行った「薬剤師がお薦めするジェネリック医薬品(GE薬)調査」の結果に記載された項目には、多様な味が並ぶ。
糖衣に包まれた甘い錠剤や小児用の甘いシロップ薬、薬を飲みやすくするためのゼリーはあるが、一般向けの薬の味もここまで豊富なことに驚かされる。
小児用ではバナナが人気
兵庫県の調査は薬のおいしさを決めるものではなく、患者に人気があったり調剤しやすかったりという観点から、薬剤師自身がすすめるGE薬を調査し、医療機関や薬局がGE薬を選択する際に参考となるリストを作成するために実施されたものだ。県内の821施設から回答を得ている。
調査対象となったのは内服薬793品目、外用薬280品目、注射1品目で、そのうち回答薬局件数(おすすめした薬局件数)が3件以上となった「おすすめGE薬」は178品。
調査票によると内用薬の「おすすめする理由」には使いやすさや価格、形状などに加え、「味が良い」「臭いが良い」という項目があり、冒頭のさまざまな味はここに詳細情報として回答されたものだ。例えば小児用ではシロップ状の製品が多いためか、味も「オレンジ味で飲みやすい」「イチゴ味で飲みやすい」という記述が目立つ。
人気なのはバナナ味で、30品目ある小児用GE薬のうちバナナ味は5品。さらにチョコバナナ味も1品ある。その他、桃や青りんごなどフルーツ系の味が小児用の主流のようだ。
小児用以外とされているGE薬にも、数は多くないもののさまざまな風味がある。記載されているだけでも「オレンジ」「ヨーグルト」「ミント」「ココア」「コーヒー」「イチゴ」「メントール」「抹茶」が確認された。「杏仁豆腐のような味で飲みやすい」という記述もある。
味が豊富なのは水なしで飲める薬
ところで、一般用ではどんな薬に味がついているのだろうか。調査結果に記載されているGE薬の効果効能を調べてみたがアレルギー治療薬や抗菌薬、胃酸を抑える薬とばらばらだ。該当する薬の成分が特に苦いわけでもないらしい。そこで、J-CASTヘルスケアが東京都内の調剤薬局に調査結果を見せて取材をしたところ、あっさりと理由が判明した。
「味がついているのは基本的に『OD錠』、つまり水なしで飲める錠剤です。口にそのまま入れるだけで唾液によって溶けますが、水で飲む場合より薬の味を感じやすいので、何らかの味をつけているものが多いですね」
手元に水がない場合や飲み込むのが困難な患者、水分摂取制限をしている患者でも服用できるOD錠ならではの理由というわけだ。これだけ味が豊富なら、同じ効能の薬の中で味を理由に選ぶということもできそうだが。
「すべてのGE薬をそろえている薬局は少ないですし、(在庫がなければ)さすがに『コーヒー味の薬をください』といったご要望にはお答えできません」
基本的にGE薬が選ばれるのは価格面の理由からが多いとのことだが、先発薬の評価を参考にして、苦みを抑えたり甘みを加えることで飲みやすくしたGE薬もあり、飲みやすさを求める患者に処方することもあるという。