メイ首相は「EU離脱強行派」
英ポンドが急伸した要因は、総選挙で与党・保守党が勝利する可能性が高いとの見方が多く、メイ首相による政権運営が安定するとの思惑から、「ポンド買い」につながったとみられる。
第一生命経済研究所経済調査部の主席エコノミスト、田中理氏は2017年4月19日のレポートで、「メイ首相の英断」と題して、「議会基盤が脆弱で、選挙の洗礼を受けていないことが、メイ政権にとってのアキレス腱」と指摘。そのうえで、「離脱協議への影響が少なく、最大野党の労働党が党勢回復に苦しむ今が千載一遇のチャンスと考えたのだろう。前倒し選挙で議会基盤を強化することに成功すれば、保守党内の離脱強硬派の発言力を封じ込めることができる。単一市場から完全な離脱(ハード・ブレグジット)を進める政府の方針に変わりはないが、合意のないままEUを離脱する『クリフエッジ』のリスクは低下する」とみている。
とはいえ、英ポンドがこのまま上昇、あるいは高値水準を維持できるかは不透明。前出の外為どっとコム総研の神田卓也氏は、「6月8日まではまだ紆余曲折ありますよ。EUから離脱するにしても、メイ首相は強行派ですし、むしろ反対派の進め方のほうがソフトランディングで、そちらを支持している人は少なくありません。一方的な値動きにはなりづらく、ポンドが売り戻せる状況にはあると思います」と推測する。
英BBCなどによると、メイ首相は「総選挙を実施しても欧州連合(EU)からの離脱スケジュールに影響はない」との見通しを伝えたとされるが、選挙結果によっては、英国がEUの離脱交渉を有利に進めることができるかどうかはわからない。