安倍政権の閣僚から失言が相次ぐ中、与党幹部の発言が議論を呼んでいる。自民党の古屋圭司選挙対策委員長が、沖縄県で行われている市長選の対立候補の政策について、「沖縄特有のいつもの戦術」などと批判したところ、野党から「差別的な認識に基づいている」といった批判が出ている。
ただ、これまでの「失言騒動」と違うのは、古屋氏が「客観的ファクトを申し上げた」と、批判に対して反論している点だ。
与党系、野党系の「一騎打ち」
問題視されているのは、古屋氏が沖縄県うるま市長選(4月16日告示、23日投開票)をめぐってフェイスブックに書き込んだ内容だ。市長選は、立候補届け出順に前県議の山内末子氏(59)=無所属・社民、共産、社大、自由、民進推薦=と現職の島袋俊夫氏(64)=無所属・自民、公明推薦=の一騎打ちになっている。翁長雄志知事は山内氏を支援しており、「オール沖縄」を演出したい考えだ。自民党も、選対委員長の古屋氏を現地に送り込むなど力を入れている。
古屋氏は4月16日、島袋氏の出陣式の様子を報告する中で、
「相手は共産、社民が主導する候補。何でも反対、全く財源の裏付けのない無責任な公約や、空虚なキャッチで市民への詐欺行為にも等しい沖縄特有のいつもの戦術」
などと山内氏の政策を非難した。
給食費と医療費無料化に財源はあるか
うるま市の選挙公報によると、山内氏は大きく
「学校給食費の無料化に取り組みます」
「高校卒業までのに医療費を無料化か」
「給付金型奨学金制度をつくります」
など6つの政策を掲げ、対する島袋氏は
「教育・子育て支援の拡大」
「地元企業育成と産業誘致」
「経済の活性化 失業率の改善」
の3つを基本政策と位置づけている。古屋氏の書き込みは、山内氏が掲げる無料化政策を念頭に置いているとみられる。山内氏はこうした批判を見越したのか、選挙公報で「財源はあります」
の見出しで、
「市の予算525億円の1%をまわせば、給食無料化、高校卒業までの医療費の無料化もできます」
とも主張している。
古屋氏「客観的なファクト申し上げた」
古屋氏の書き込みは、差別的だとして批判を呼んでいる。民進党の大串博志政調会長は4月18日の記者会見で、
「『沖縄特有の』というような、非常に、ある意味差別的な認識に基づく発言のように聞こえる」
と、「沖縄特有」という表現を問題視。沖縄タイムスも4月19日の社説で、
「公約に関して財源論を戦わせるのはかまわない。しかし『詐欺行為にも等しい沖縄特有のいつもの戦術』とは何を指しているのか。差別的まなざしが見え隠れする」
と発言を非難した。
一方の古屋氏は4月18日、記者団に対して、
「私は今までの客観的なファクトを申し上げたに過ぎない」
と批判に反論している。