ブランド牛やカニ、パソコン、iPadなど自治体に寄付した際に豪華な返礼品がもらえるとブームになっている「ふるさと納税」について、総務省は2017年4月1日、全国の自治体に対し、返礼品にかける金額を寄付額の3割以下にするよう通知を出した。返礼品の競争が過熱し、一部で制度の趣旨に反するような返礼品が贈られていることを問題視した。
総務省が返礼割合を具体的に示したのは初めて。通知に強制力はないものの、高市早苗総務相は3月末の会見で「個別の団体に直接見直しを強く働きかけていくことを予定している」と述べ、従わない自治体には容赦なく改善を要求する構えだ。
スタートした2008年度の約20倍に
ふるさと納税は、自治体に寄付した場合に2000円を超えた額が年収などに応じて控除されるというもので、2008年度に導入された。
名前に「ふるさと」とあるが、出身地に限定されず自分の好きな自治体に寄付ができる。地元産品などの返礼品がもらえるとあって人気は年々高まり、2015年度の寄付額は1653億円と、スタートした2008年度の約20倍となった。
ここまで寄付額が伸びたのは、返礼品が豪華になってきた影響が大きい。各自治体が返礼品にかける平均金額は寄付総額の約4割だが、自治体の多くが返礼品にしていて、人気が高いブランド牛の場合、寄付額の5~8割程度になるという。換金しようとする人が続出して既に廃止されたものの、千葉県の勝浦市や大多喜町の商品券は6~7割だった。京都府宮津市に至っては寄付1000万円で約750万円相当の宅地を返礼品に掲げたが、これは、さすがに総務省の指摘を受けて取りやめになった。
実際、寄付を多く集めたランキングの上位には返礼品が注目を集めた自治体が並んだ。42億3100万円を集めて首位の宮崎県都城市は高級和牛や焼酎がうけた。2位は魚のほか「iPad」や「ニンテンドーDS」が話題になった静岡県焼津市の38億2600万円。このほか、5位の岡山県備前市は家電が人気を集め、返礼に金券を贈っていた千葉県大多喜町も18億5500万円で12位に食い込む――といった具合だ。
「本来の趣旨に戻るのは賛成」「これでブームも終わり」
本来、ふるさと納税は税収が少ない地方にお金を回して応援しようという趣旨だった。しかし、換金や転売がしやすい商品券や家電などを贈る自治体も出始め、寄付を得ようと次第に自治体間の返礼品の競争が激化。これを見かねた総務省は2015年4月に「換金性の高いプリペイドカード等」「高額又は寄附額に対し返礼割合の高い返礼品(特産品)」を贈らないよう通知した。
しかし、自治体間の競争は収まる気配がないため、総務省は「ふるさと納税が寄せられても、地域の活性化や住民サービスの向上のための施策に充てる財源が実質的に減ってしまうから大変な問題だ」(高市総務相)との危機感から、この4月から返礼品にかける金額の上限を3割にするよう通知した。さらに贈るのが適当でない品物として、金銭類似性の高いもの(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル等)、資産性の高いもの(電気・電子機器、家具、貴金属、宝飾品、時計、カメラ、ゴルフ用品、楽器、自転車等)などを具体的に指定した。
このニュースはネット上でも大きな話題となった。「平均3割で税収増えた自治体もあるわけだから、3割でいいんじゃない」「換金性高いのはやっぱだめだろう」「本来の趣旨に戻るのは賛成」などと総務省に肯定的な意見のほか、「これでブームも終わり」「そもそもおかしな制度。廃止した方いい」といったコメントも見かけられた。