ツイッターはもう古い、これからは「マストドン」だ――ネットの一部で、そんな話が盛り上がっている。
ドイツ発のこのSNSは、2017年4月に入って日本でも利用者が急増し、その「古くて新しい」魅力に取りつかれる人が続出中だ。いったいどんなサービスなのだろうか。実際に記者が参加して、その面白さを体験してみた。
4月に入って一気に大ブレーク
今回、記者は日本人ユーザーが集まる「mstdn.jp」というインスタンス(フォーラム的なもの。詳しくは後述)を覗いてみた。大学院生の「ぬるかる」さんが個人で作ったものだが、4月18日時点で約6万5000人が登録、世界第2位の規模となっている(1位はPixivが運営する「pawoo.net」で、こちらも日本)。
ログインしてみると、その画面はツイッター、というより、その閲覧用クライアントとして一時期よく使われていた「TweetDeck」に似ている。この時点で、ツイッタラーには懐かしい。
ツイッターだと、何人かフォローしないことには誰の発言も見られないのだが、マストドンでは「ローカルタイムライン」というものがある。これを選ぶと、そのインスタンスにいる人の発言がすべて流れてくる。mstdn.jpなら、6万人超分の投稿だ。真面目な内容から下ネタまで、滝のように流れてくる。普通のフォローもできるが、これを見ているだけでも結構楽しい。
自分もなにか投稿してみよう。ちなみに、つぶやきは「ツイート」ではなく、「トゥート」と呼ばれる。リツイートは「ブースト」だ。500文字まで入るが、ほとんどの人は140字も使っていない。
「早く原稿書かないと」
試しにそうトゥートしてみると、すぐに「お気に入り」がついた。記者と同じように「ローカルタイムライン」を眺めている人も多いらしく、フォロー数が少なくとも、トゥートに対してよく反応が返ってくる。レスポンスがあるのが嬉しくて、知り合いだらけのツイッターでは書けないような、くだらないことばかりトゥートしてしまう。
パソコン通信への先祖返り的側面も?
マストドン(Mastodon)は2016年10月、ドイツの若き技術者、オイゲン・ロッコさんが開発したSNSだ。17年3月ごろから海外で話題になり始め、日本でも4月10日あたりからネットメディアが紹介、注目を集めるようになった。
そのシステムは、ツイッターと掲示板のいいとこどりを狙った、という感じか。ITジャーナリストの三上洋さんは、こう解説する。
「ニュアンスとしては、特定のサービスの中でユーザーがつながり、それぞれ独自の文化が作られてきた『パソコン通信』に近いです。さらにいえば、アマチュア無線のパケット通信(RBBS)にもそっくり。掲示板ごとに文化、ルールはあるのですが、一方で世界にもつながっている」
ツイッターなら、一つの大きなオープンの「場」があり、運営も単一だ。国で言えば中央集権制である。しかしマストドンでは、各人が小さなフォーラム=「インスタンス」を作り、運営することができる。たとえば、記者が参加した「mstdn.jp」は日本向けのインスタンス、Pixivの「pawoo.net」は漫画・イラスト好きのためのインスタンスとして作られている。ユーザーは好きなインスタンスを選んでログインし、その中で会話を楽しめる。
一方、インスタンス同士はゆるやかに「連合」を結んでおり、インスタンスをまたいでユーザーをフォロー――たとえば、「mstdn.jp」にいながら、「pawoo.net」の人をフォローすることも可能だ(逆に、インスタンスのポリシー次第では「断交」もあり得る)。国にたとえれば「連邦制」だろう。
ツイッターほどオープンではなく、掲示板ほどタコツボではない。そこがマストドンの特徴か。
今後はまだまだ未知数だが
「mstdn.jp」でローカルタイムラインを見ていると、「新しいおもちゃ」にユーザーはみんな夢中だ。下品だったり、バカバカしかったりする書き込みも多い(もとい、それが過半数)。
だが、どこか「祭り」的一体感が漂っている。17日夜、ユーザー数が6万人を突破した瞬間には「6万人来た!」と一斉に書き込まれ、ぐっと盛り上がった。多くの人が指摘するように、かつてのツイッターを思わせる空気があって、記者にとっては居心地のいい空間だった。
いずれにせよ、まだまだ日本での展開は始まったばかり。前述の三上さんはこう分析する。
「インスタンス、分散型というテクノロジー面での面白さと、『先祖返り』的なコンセプトで人気を呼んでいますが、現状はまだアーリーアダプター層が集まっている段階。今後については、まだまだ未知数です」