患者負担大きい「持続エクスポージャー療法」
厚生労働省のウェブサイトにある「みんなのメンタルヘルス」の「PTSD」についての説明によると、PTSDは、1980年の米精神医学会の診断基準で初めて用いられたもので、それまでは外傷神経症、災害神経症などと呼ばれていた。
日本では、1995年1月の阪神・淡路大震災や、同年3月の地下鉄サリン事件がきっかけに知られるようになり、その後は、大規模災害や犯罪だけでなく、交通事故、単独の犯罪被害、虐待などによっても生じていることも知られるようになった。
筑波大などの研究グループによると「PTSD になると、日常生活のあらゆる場面でトラウマ記憶がよみがえったり(フラッシュバック)、悪夢に悩まされたりし、生活が非常に困難になる」という。
近年では、米国を中心に確立された、思い出したときの恐怖になれる「持続エクスポージャー療法(PE)」などにより治療可能であることが分かってきているが、同療法でも3か月程度はかかることや、どの医療機関でも治療が受けられるほどには普及していないうえ、患者が辛い記憶を繰り返し思い出さなければならないため負担が大きく新しい治療法の開発が期待されている。
研究グループは、今回の成果について「心理的な不快感を伴わずに、睡眠中にトラウマ記憶を減弱できたという点で、きわめて画期的」としており、今後はどのような脳内メカニズムが減弱を引き起こしたかを検討する。